武田薫
著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

女子やり投げ北口榛花の世界陸上金メダルに思う…選手が国旗をかざす意味の変化

公開日: 更新日:

 ようやく涼しくなった。夏は大変だった。深夜の世界陸上選手権から早朝の全米オープンテニスと、不規則なテレビ観戦が続き、(どうせ暑くて眠れないが)生活は乱れた。最大の収穫はやり投げの北口榛花だ。

 やり投げはヨーロッパの人気種目だ。北欧の白夜の競技会は夕方からやりの放物線が見える席が埋まっていく。かつて異才・溝口和洋は己の弾道に酔い、気に入らないと踏み切り線を踏んで記録を消した。現役終盤は踏んでばかり。野球から転向したきっかけは「味方のエラーが許せんかった」と話したが、自分自身をも許せない豪傑だった。

 世界記録保持者のヤン・ゼレズニー(チェコ)がアトランタ五輪で優勝した後、契約M社が野球の遠投を企画して130メートルくらい投げた。地元ブレーブスの入団テストと銘打ったが、ヨーロッパならやりで食える。あの辺は金の卵がゴロゴロ、ツインズのスカウトが話していた。

 北口は豪快な最後の一投で金メダルを手にした。チェコに渡って師事したコーチと抱き合い、日の丸を羽織って歓声に応える姿は印象的で、チェコ語の会見に驚いた。卓球福原愛石川佳純の中国語ほどではないが、競技への情熱が伝わってきた。強くなるには本場に出向いて研鑽するしかない。テニスの錦織圭マラソン大迫傑……1980年代から90年代は世界の強豪が円を求めて来日したが、時代は変わり、選手は自ら海を渡る覚悟が求められている。ということは、国代表=日の丸の意味も変わっているはずだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転、“ダンマリ”にしれっと変節

    吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転、“ダンマリ”にしれっと変節

  2. 2
    ヤマト運輸「大量解雇」は数千人規模 個人事業主約3万人に続き、パートも対象へ

    ヤマト運輸「大量解雇」は数千人規模 個人事業主約3万人に続き、パートも対象へ

  3. 3
    「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに

    「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに

  4. 4
    浜崎あゆみ FNS歌謡祭で「Who...」熱唱も…またもや“別人疑惑”、「まさにwho?」の声も

    浜崎あゆみ FNS歌謡祭で「Who...」熱唱も…またもや“別人疑惑”、「まさにwho?」の声も

  5. 5
    岸田政権の少子化対策また的外れ…子ども3人世帯「大学無償化」に《不公平だ》と批判殺到

    岸田政権の少子化対策また的外れ…子ども3人世帯「大学無償化」に《不公平だ》と批判殺到

  1. 6
    山下美夢有 史上最年少で2年連続女王の快挙に白い目…ゴルフ関係者も呆れる“マーク問題”

    山下美夢有 史上最年少で2年連続女王の快挙に白い目…ゴルフ関係者も呆れる“マーク問題”

  2. 7
    ヤンキースからラブコールの山本由伸 カネ以外に求める「付帯条件」が分かった!

    ヤンキースからラブコールの山本由伸 カネ以外に求める「付帯条件」が分かった!

  3. 8
    人気絶頂の国内女子プロゴルフ、凋落の始まり? 21年GMOに続き楽天・三木谷社長も撤退の不穏

    人気絶頂の国内女子プロゴルフ、凋落の始まり? 21年GMOに続き楽天・三木谷社長も撤退の不穏

  4. 9
    松野官房長官「1000万円超」裏金キックバック疑惑にゼロ回答…国会でも“アルマジロ”の本領発揮

    松野官房長官「1000万円超」裏金キックバック疑惑にゼロ回答…国会でも“アルマジロ”の本領発揮

  5. 10
    小平智と古閑美保の離婚ウラで囁かれる…“本命”人気男子プロの離婚情報

    小平智と古閑美保の離婚ウラで囁かれる…“本命”人気男子プロの離婚情報