著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

森保J主将・吉田麻也の成長過程を恩師の言葉から紐解く「協会トップを担う唯一無二の存在」

公開日: 更新日:

今久保隆博(Asian LABO代表 元名古屋コーチ兼アナリスト)

「結果が出なければ(日本サッカー)協会も選手も責任を取る覚悟はできている。不甲斐ない結果になったら、自分もすっぱりと辞めようと思っている」。2021年10月のカタールW杯アジア最終予選3戦目のサウジアラビア戦に敗れた後の吉田麻也の発言は、多くの人の心を動かした。あの時、主将が毅然として強い危機感を訴えていなければ、日本代表はカタールW杯を逃していたかも知れなかった。「長崎から名古屋のセレクションを受けに来た小学生の時も、麻也は他の子と覚悟が全く違いました。あの潔さと賢さは当時と変わりません」と語るのは名古屋U-15(15歳以下)時代の今久保隆博コーチだ。恩師の言葉から日本の主将の成長過程をひもといた。

 ◇  ◇  ◇

■しっかり文武両道

 ──吉田と初めて会ったのは?

「長崎から、セレクションを受けに来た小6の夏でした。『長身・長髪の子』という印象でプレー自体、そこまで飛び抜けていたという印象はなかったですね。テストの後でコーチ陣が集まって合否の相談をした時も、彼は当落線上。ただ、私は『他の子と覚悟が全く違う』と感じた。プロになるために長崎から名古屋に来るのは、そうそうできることじゃない。『両親や家族のためにもブレずにトップに上り詰めるんだ』という意志の強さが見て取れました。それで合格を推しました」

 ──中学時代は上の兄と2人で暮らしながら名古屋U-15に通った。

「生活面までは詳しくは知りませんが、自分自身を上手にコントロールして、しっかりと文武両道だったと思います。英語学習も当時から始めていたそうですが、トップに昇格した直後は、しゃべっているところは見たことはなかったですね。外から見えない努力を重ねていたのでしょう」

 ──彼の人柄は?

「麻也の代は、長谷川徹(徳島GK)ら計6人のプロ選手が出たハイレベルな集団だったんですが、当時は私自身がまだ若く、指導の引き出しが少なかった。彼らは『どうしたらいいのか』と迷うことも多かったと思います。そんな時、麻也は必ずストレートに疑問を投げかけてきましたね。大人と同じ目線で会話できる中学生でした」

 ──それを象徴するエピソードは?

「中3最後の高円宮杯U-15予選で清水ジュニアユースと対戦したんですが、高校サッカー部に進むことになったエースFWをクラブ事情によって出場させないことになった。それに納得がいかなかった麻也は『なぜですか?』と私に異議を申し立ててきたので1対1でひざを交えて話をしました。『3年間一緒にやってきた仲間だから最後の試合は一緒に戦いたい』と最後まで食い下がってきたことをよく覚えています。結局、その選手を出さずに試合に挑み、負けてしまった。麻也は悔しさを押し殺し、彼に向かって『今までありがとう』と声をかけていた。その麻也の立派な立ち居振る舞いを見た時、指導者としての不甲斐なさを痛感させられました」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    すい臓がんの治療が成功しやすい条件…2年前に公表の日テレ菅谷大介アナは箱根旅行

  3. 3

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  4. 4

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  5. 5

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  1. 6

    「戦隊ヒロイン」ゴジュウユニコーン役の今森茉耶 不倫騒動&未成年飲酒で人気シリーズ終了にミソ

  2. 7

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  3. 8

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 9

    志茂田景樹さんは「要介護5」の車イス生活に…施設は合わず、自宅で前向きな日々

  5. 10

    NHK大河「べらぼう」に最後まで東洲斎写楽が登場しないナゼ?