早草紀子
著者のコラム一覧
早草紀子フォト・ジャーナリスト

兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカー誌に寄稿。1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌を主戦場に活躍。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンを務め、女子サッカー報道の先駆者として幅広く活動した。日本サッカー協会公式サイトで長年、女子サッカーのコラムを担当。現在Jリーグ・大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。「紡 なでしこジャパンが織りなす21の物語」「あすなろなでしこ」「なでしこの教え」など著作多数。

フィンランド戦5-1快勝の中で爪痕を残した植木のポテンシャルを実感した

公開日: 更新日:

 セルビア代表戦(現地6月24日午後7時45分キックオフ)が行われたスタジアム(セルビア/スタラパゾバ)から、ホテルに戻ったのは夜の午後11時を回った頃。次なる戦いの地・フィンランドへのフライトが、まさかの翌朝6時台。飛行場への迎えがホテルに来るのが午前3時半……。

 搭乗ギリギリまで作業をし、乗り継ぎながらようやくフィンランドに到着したのは、もう夕刻に差しかかった頃だった。もう最高に眠い。

 それでもゴールはここからさらに車で約2時間のところにある街・トゥルクだ。 なんとか眠気を吹き飛ばしたいところだったが……いらぬ心配だった。

チャーハンの値段で睡魔が吹っ飛んだ

 あまりの空腹に久しぶりにお米が食べたいと空港のフードコートでチャーハンをオーダーするが、会計金額20ユーロ!! キャッシュオンデリバリーのフードコートで、チャーハンがなんと2800円! 手に持っていたシナモンロールとコーヒーをそっと陳列棚に戻し、ここは手持ちの水で我慢。一粒、一粒を大切にチャーハンを味わう。

 フィンランドの物価の高さは覚悟していたが、徹夜で疲弊した頭の中ですっかり抜け落ちていた。眠気を吹っ飛ばしてくれた衝撃に感謝しよう。

 トゥルクの宿泊先は運河沿い。夕方になれば、停泊している船のレストランは賑わいを見せる。歩いて回れるこじんまりとした街だ。帰国に必要なPCR検査を受けるクリニックもショッピングモールの中にあり、ありがたいことに午前8時から対応してくれるとのこと。

 場所の確認ついでに予約も完了し、ミッション終了。これで無事に陰性証明を勝ち取れば、あとは失われた睡眠を補うべく寝倒していれば日本へ帰国できる。まずは一安心だ。

 現在のフィンランドは、厳しい寒さを超えて短い夏を迎えている。ということは、そう白夜だ! 

フィンランドの陽射しは痛かった

 太陽が沈まない。午前2時で夕焼けを拝むことができるが、そこをピークにどんどん明るくなっていく。遮光カーテンで夜時間を捻出し、体内時計の調整が整うか、整わないかのタイミングでフィンランド代表戦当日(現地27日)がやってきた。

 暑い……いや最早痛い! ウォーミングアップの時間になっても当然、太陽は元気満々だ。一切日陰のないピッチで午後6時15分にキックオフの笛が鳴らされた。

 フィンランドは7月6日に開幕するUEFAヨーロッパ女子選手権を控えており、日本戦は残る強化試合2試合の一つと重要な位置付けになっていた。

 守備の戻りも速く、厳しいチェックでフィニッシュをブロックするフィンランドの堅守に、セルビア戦のようなプレスがハマらない日本。もう一つのフィンランドの特長であるセットプレーでもヒヤリとする場面もあった。

 しかし、DF裏へ鋭いクロスボールを入れていた遠藤純(エンジェル・シティFC)がオウンゴールを誘い、早々に先制点に漕ぎつける。

 その後、あっさりと失点を喫してしまったが、ポジションの微調整をした後半は日本が流れを掴むと途中投入された植木理子(日テレ・東京V)がしっかりと爪痕を残す。 

 3点目となる高橋はな( 浦和)のゴールは「ほぼ(植木)理子のゴールです(笑い)」と高橋本人も言うように、CKからの流れで植木がゴール左隅を狙ったヘディングが、ゴールライン上へ落ちたボールを高橋が押し込んだものだ。

 ゴールの香りを漂わせていた植木だったが、続くチーム4点目は正真正銘、彼女の技アリゴール。こぼれ球を胸トラップからボレーで豪快にゴールネットを揺らした。 

欧米にも通用するスキルを証明

「自分でもビックリしてます(笑い)。前線の選手がすごくハードワークして流れを作ってくれたので、それを見ていた中で後半はそれを無駄にしちゃいけないな、と。相手が疲れていて付け入る隙はあると感じてました」(植木)

 コメントから伝わるこの熱さも植木ならでは、だろう。

 女子アジアカップでは韓国、中国といったライバル国から先制点、勝ち越し点を奪ってきたが、その度に追いつかれてチームを救い切れずにきた。

「あそこでゴールを決められてれば……」と悔しさも人一倍噛みしめた。

 力量差はあれど、世界の女子サッカー界を牽引するヨーロッパ勢を相手に自分らしさ全開で結果を引き出したこの試合で、彼女にはアジアのみならず、欧米にも通用するスキルがあるを証明してみせた。

 そろそろ世界のトップとの勝負を見てみたい。岩渕真奈(アーセナル)が不在だったからこそ、なおさら植木のポテンシャルを感じるプレーの数々だった。(つづく)

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