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鈴木良平サッカー解説者

1949年6月12日生まれ。東京都世田谷区出身。東海大卒業後の73年、ドイツの名門ボルシアMGにコーチ留学。名将バイスバイラーの薫陶を受け、最上級ライセンスのS級ライセンスを日本人として初取得。84-85年シーズンのドイツ1部ビーレフェルトのヘッドコーチ兼ユース監督。なでしこジャパン初代専任監督。98年福岡ヘッドコーチ。

なでしこ準々決勝のタイ戦では「強さ」と「美しさ」を見せてほしい

公開日: 更新日:

 韓国相手に勝利することは男女を問わず、容易なことではない。日本には絶対に負けられないという気持ちの強さ、フィジカルの強さ、球際の強さ、ゴールへの執着心……などに手を焼いた日本サッカーは、これまで何度となく煮え湯を飲まされてきた。

 2023年のオーストラリア・ニュージーランド共催女子W杯のアジア予選を兼ねた「アジアカップ」がインドで行われ、日本代表(なでしこジャパン)はグループリーグ最終戦(1月27日)でライバル韓国代表と対戦した。

■タイ戦勝利でW杯出場が決まる

 試合は開始直後、FW植木が抜け出してGKと1対1となり、ゴール右に流し込んで先制弾を決めた。なでしこジャパンはその後も優位に試合を進めたものの、なかなか追加点を奪えず、終盤にゴール前の混戦から同点弾を決められて1-1のドロー決着となった。

 日韓ともに通算成績2勝1分け・勝ち点7で並んだが、なでしこジャパンが得失点差で上回ってグループリーグ1位とし、30日の準々決勝の対戦相手・タイに勝利すればW杯出場が確定する。

 韓国相手に勝ち点を奪い、W杯出場に王手をかけるーー。大変に喜ばしいことではあるが、なでしこジャパンの実績、現在の立ち位置などを考えると「そんなことで喜んでいる場合ではない」と言いたい。

 韓国に負けなかったこと、W杯出場に王手をかけることに「価値を見出していない」という意味では決してない。

 素晴らしいパスサッカーで2011年女子W杯ドイツ大会を制して世界女王となり、アジアの盟主として欧米のライバル国を相手にW杯や五輪などで上位進出が期待されている限り、「高い目標を達成したときに喜ぶべきではないか」と言いたいのである。

 グループリーグ初戦のミャンマー戦、2戦目のベトナム戦が終わった後の当コラムで「シュートに持ち込むまでの創意工夫」に乏しくて「シュートを山ほど打っても決めらない」悪循環に陥っていると書いた。

 なでしこジャパンは、韓国相手にボール支配率64%(前半69%)と優位に立ち、シュート本数は韓国の8本(前半4本)の倍近い15本(9本)を記録した。

アジア女王になる可能性は高い

 相手を崩した場面もチャンスの回数もシュートの本数も球際の攻防(デュエル)も、なでしこジャパンがすべての面で上回ってゲームをコントロールしていた。しかし、なでしこは勝てなかった。

 繰り返しになるが、やはり「シュートに持ち込むまでの創意工夫」に乏しく、試合をコントロールすることはできても、ゴールを重ねて圧倒する力が、今のなでしこジャパンに欠けているからである。

 たとえば、韓国の方が「なでしこよりも優れている」という部分は少なくない。個々の選手の突破力、スピード、フィジカル、シュートの力強さなど見るべき点ほ多かった。

 なでしこジャパンの持ち味は「高レベルの個人技と戦術眼をベースにボールを繋ぎ、試合の流れを掌握してゴールに迫っていく」ところだ。

 ストロングポイントを伸ばしていくことは、もちろん大事なことではあるが、劣っている部分を決してないがしろにすることなく、レベルを上げていくことに精力を傾けていくことが求められる。

 恐らく準々決勝でタイに勝利し、なでしこジャパンはW杯出場を決めるだろう。準決勝と決勝に進み、優勝してアジア女王になる可能性も高い。

 しかし、W杯予選を兼ねているからと言って「内容よりも結果重視」で構わないと私は思わない。

 全ての試合に高い問題意識を持って臨み、アジア女王の先に「世界大会で上位に入る」ことを見据えつつ、準々決勝のタイ戦では、なでしこジャパンの「強さ」「美しさ」を見せてもらいたい。

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