著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

板倉滉は吉田・冨安“鉄板CB”戦線離脱の緊急事態に守備陣を統率できるのか

公開日: 更新日:

板倉滉(シャルケ/24歳)

 1月27日と2月1日に迫ったカタールW杯最終予選の天王山、中国とサウジアラビアとの2連戦に向けて森保日本が24日から再始動した。今回の最大の懸念材料は、絶対的主将である吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(アーセナル)の両センターバック(CB)が戦線離脱したことだろう。重要な最終ラインの中心を誰が担うのか。そこは大きな注目点だ。筆頭候補と見られるのが、東京五輪世代の板倉だ。2021年夏の東京五輪本番でも、負傷に苦しんだ冨安の代役として獅子奮迅の働きを見せた男にかかる期待は大きい。

■東京五輪で吉田とCBコンビ

 2019年1月に英プレミアリーグの名門マンチェスターCに移籍し、そこからオランダ1部・フローニンゲンにレンタルされ、3シーズンを戦った板倉。2020-2021年シーズンはリーグ全試合フル出場を果たし、地元紙から「チーム年間MVP」にも選出されるほどの目覚ましい活躍を見せた。

 昨夏の東京五輪でも1次リーグの南アフリカ戦とメキシコ戦、準決勝のスペイン戦に先発。吉田とCBコンビを組み、ケガがちの冨安の穴を感じさせない働きを見せた。五輪直後にはドイツ2部のシャルケに移籍。かつて内田篤人(JFAロールモデルコーチ)が、主軸として活躍したという追い風もあり、関係者やサポーターから瞬く間に信頼を勝ち得ることに成功。8月28日のデュッセルドルフ戦からコンスタントに3バックの一角を担い続けている。

川崎の後輩の活躍に焦燥感

 中国戦当日の27日に25歳の誕生日を迎える絶頂期の長身DF(186センチ)だけに、昨年9月からスタートした最終予選でも戦力になると見られていた。が、初戦のオマーン戦直前に負傷し、チームを離れたのが痛かった。10、11月の4試合はベンチ入りしたものの、吉田・冨安の鉄板コンビの間に割って入る機会は巡ってこない。

 同い年の中山雄太(ズヴォレ)、川崎の下部組織時代の後輩に当たる三笘薫(サン・ジロワーズ)や田中碧(デュッセルドルフ)らが着実にA代表で出番を勝ち取る中、多少の焦りを感じているかもしれない。

 だからこそ、今回の2連戦では確実にチャンスをつかまなければいけない。CBの候補は、板倉に加えて川崎で主将を務める谷口彰悟、2018年ロシアW杯戦士の植田直通(ニーム)、そして冨安に代わって追加招集された中谷進之介(名古屋)。4人の中で多少のアドバンテージがあるのは植田である。冨安がアーセナルとの契約のため出場を回避したW杯最終予選初戦のオマーン戦に先発しているからだ。

■国際舞台での経験値の低さ

 しかしながら、その重要な一戦で彼はラスト2分の失点に絡み、後味の悪さを拭い切れていない。

 その後、10月の2連戦は代表に帯同したが、11月シリーズは落選の憂き目に遭っている。

 谷口の場合、植田に代わって11月シリーズでチームに帯同したが、ベンチ入りしたのはオマーン戦だけ。所属クラブでの統率力、インテリジェンスは申し分ないのだが、どうしても国際経験不足という点が引っかかる。最終予選初招集となった中谷にしても、谷口以上に国際舞台での経験値の低さは否めない。この部分を森保一監督も、不安視しているのではないか。

 その点、板倉は東京五輪で修羅場をくぐっているし、シャルケでも日常的に大柄で屈強な外国人FWと対峙している。メンタル的にも落ち着きがあるタイプなので、吉田や冨安の代役を任せても問題はないはずだ。

 懸念材料があるとすれば植田、谷口、中谷との連係部分だろう。

 谷口とは川崎時代に多少なりとも、練習などで一緒にプレーしたことはあるだろうが、それ以外の面々とは、皆無と言ってもいいかもしれない。 いきなりコンビを組んだ場合、呼吸がうまく合うのか、やはり気になるところ。厳しい環境下で板倉がリーダーシップを発揮できるのか。このこともスタメンか、否かの大きなポイントになる。

「A代表には、2019年6月のコパ・アメリカから呼んでもらっていますけど、自分が活躍して引っ張っていかないといけない、という自覚はあります。欧州に行ってから『相手にやらせない』という考えに大きく変わった。強い相手、速い相手にどう対応していくのか、駆け引きには磨きをかけたつもりです」と本人も自信を深めつつ、もう一段階上に飛躍したいという意気込みが伝わってくる。

 中国戦で最終予選初出場を果たし、日本守備陣の救世主となってカタールW杯本番への布石を打てるのか。

 目下、Aマッチ5試合出場1ゴールの男の本当の挑戦が、ここからが本番を迎える。

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