日大背任事件のキーマンはこの男 “ドンの懐刀”井ノ口忠男理事の過去と正体

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 日本大学付属板橋病院(東京都板橋区)の建設工事をめぐり、東京地検特捜部が8日、背任容疑で日大本部などを家宅捜索した事件。建設工事の設計業務契約に関する交渉は、大学側から委託を受けた「日本大学事業部」(世田谷区)の役員で、同大理事の井ノ口忠男氏が担当していた。特捜部は井ノ口氏が背任事件のキーマンとみて、捜査を進めている。

 建設工事の設計業務は日大の物品調達や大学施設の管理・運営などを担う日大事業部が2020年、都内の設計会社に約20億円で発注。井ノ口氏はそのうち約2億円を、大阪市の医療法人グループの理事長が株式を保有する関連会社に移動させるよう依頼した疑いが持たれている。

 理事長は、井ノ口氏の知人だった。

 特捜部は9日、医療法人グループのコンサルタント会社を家宅捜索。この医療法人グループは、関西を中心に複数の病院や老人介護施設などを展開し、板橋病院にも医療機器や医薬品を納入している。特捜部はこれまで大学本部と日大事業部、「日大のドン」こと田中英寿理事長の自宅(杉並区)、井ノ口氏が所有するマンション(同)と兵庫県芦屋市の自宅、経営する大阪市内のスポーツ用品販売会社を家宅捜索している。

悪質タックル問題では口封じ

 事件のカギを握る井ノ口氏は、どんな人物なのか。

 日大アメフト部OBで、18年に「悪質タックル問題」が起きた際、反則行為をした選手と父親に対し、タックル指示の口封じを図り、「(従わない場合は)日大の総力を挙げてつぶしにいく」と恫喝。同年7月に責任を取って理事を辞任している。

 ところがその後、日大事業部に復帰し、19年12月に役員に就任。20年9月には大学の理事にも返り咲いた。

「井ノ口さんは、アメフト部の内田正人元監督の後輩で、十数年前、内田氏を通じて田中理事長を紹介された。井ノ口さんは田中理事長の妻が経営する東京・阿佐谷のちゃんこ屋の近くのマンションを購入し、アメフト部員を引き連れて店に通い、売り上げに貢献した。理事長も頭が上がらないといわれる妻に気に入られ、10年に日大が100%出資して設立した日大事業部の立ち上げに関わることになった」(日大関係者)

 日大事業部は当初、学生の生活支援サービスが主な業務だったが、学生と関係のない事業も手掛けるようになり、売り上げも拡大。13年は7億8000万円だったが、19年には90億円に膨れ上がった。

「井ノ口氏は大学卒業後、外車のディーラー勤務などを経て、03年にゴルフ関連の事業を始めました。女子プロのゴルフトーナメントにも携わり、スポーツ界や芸能界の幅広い人脈をフル活用して自分の会社の規模を大きくしていった。大阪の堂島に7階建ての自社ビルを所有し、芦屋の3階建ての自宅は、土地代だけで1億円は下らない。羽振りがよさそうで、高級外国車を数台乗り回すなど派手な生活を送っていた」(地元関係者)

 板橋病院を舞台にした国内最大のマンモス大学をめぐる不透明なカネの流れは、どこまで解明されるのか。

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