大谷翔平“不惑の二刀流”に尽きない不安 最新医療は「酷使し続ける右肘」をどこまで修復できる?

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「きょうは非常に良いスイングをしていると思ったが、あれだけ投げた後だけに体のどこかが痛いはず。けれども、彼は私にそのことをまったくほのめかさなかった」

 これ、日本時間5日に大谷翔平(27)が43号本塁打を打ったことを受けたマドン監督のコメントだ。自己最多の117球を投げて9勝目(1敗)をマークした翌日の本塁打に舌をまいたのだが、気になるのは「体のどこかが痛いはず」という部分ではないか。

 打つ方はもちろん、投げてもサイ・ヤング賞の有力候補。投打で抜けた存在になりつつあるだけに、不安があるとすれば故障くらいだからだ。

 同9日のエンゼルス戦に登板したパドレス・ダルビッシュ有(35)も、地元紙のインタビューで「投打両方をできる能力が驚異的なのは間違いないが、彼の体をいつも心配している。彼の体にかかっている負担は(通常の)2倍以上」と日本ハム時代の後輩のコンディションを思いやった。

マエケンは最新手術で復帰まで最短7カ月

 そんな折も折、ツインズ・前田健太(33)の右肘手術が注目を集めている。テキサス州ダラス市内の病院で肘の内側側副靱帯にメスを入れた前田が選択したのは、従来のトミー・ジョン(TJ)手術ではなく「インターナル・ブレース」を用いた靱帯修復術で、IB法といわれる最新の手術だ。

 2010年代初頭に米アラバマ州のスポーツドクターであるジェフリー・デュガス氏が考案し、ここ数年はマイナーリーグの投手を中心に症例が増えている。TJ手術は復帰に1年以上かかるのに対し、IB法は最短で7カ月と回復が早いのが特徴だ。

「TJ手術とIB法は似て非なるものです」というのは、名古屋市立大学整形外科運動器スポーツ先進医学寄付講座の講師で肩、肘を専門とする吉田雅人医師。19年に渡米し、IB法の第一人者であるデュガス医師の執刀を見学し、レクチャーを受けた吉田医師がこう続ける。

「靱帯を移植して再建するTJとは異なり、痛めた靱帯を修復して人工の靱帯で補強するのがIB法です。手術の適応も異なり、TJ手術は靱帯が著しく損傷している場合に行います。これに対しIB法は靱帯が修復可能な場合に限って施されます。手術はコラーゲンなどを含んだファイバーテープという人工の靱帯で痛んだ靱帯を修復し、人工靱帯をピーク材のネジで骨に固定します。短期間で復帰できるのは、TJのように他から靱帯を移植するのではなく、元の靱帯を残して修復した上で、さらに人工の靱帯で補強するためだといわれています。前田投手の場合、執刀医が元の靱帯の状態からIB法が可能と判断したと推測します。手術から復帰までの期間が短いIB法はベテランや契約年数に限りがある投手には特に適応になる手術と言えるかも知れません」

■過去には39歳のベテラン左腕が1年でマウンドに戻ったが

 メジャーでは19年10月に左腕リッチ・ヒル(当時39)が、IB法によりメスを入れ、約10カ月間のリハビリを経て翌20年9月に復帰。今季は2球団を渡り歩き、現在はメッツでローテ入りし、27試合計133.0回を投げ、6勝6敗、防御率3.92。来年の3月で42歳になるベテランが奮闘している。

 一方でIB法はまだ、比較的、新しい手術方法であり、TJ法と比較し、手術の適応や術後のパフォーマンスなどの報告は限られている。IB法の手術適応は慎重に考慮する必要がある。

 今季、投打の二刀流で結果を残している大谷は18年10月にTJ手術を受けている。復帰2年目の今季は投打ともハイレベルなパフォーマンスを発揮して完全復活を果たした。

 エ軍は大谷が再び、肘を故障したら、投手を断念させて打者に専念させる方針と言われる。二刀流ではフィジカルへの負担が計り知れず、再びメスを入れれば、長期離脱を強いられ、戦力ダウンのリスクが生じるからだ。

 前田が受けたIB法など、医療やリハビリは目覚ましい進歩を遂げている。大谷は最新医療の恩恵を受けたヒルのように不惑を過ぎても二刀流でプレーできるのか。

「一度、靱帯を再建している大谷選手はIB法の適応外と診断される可能性が高いと考えられます。前回、靱帯を移植しており、移植を行った靱帯に人工靱帯で補強した報告はありませんし、難しいでしょう。前田投手のように初めての手術ならともかく、大谷選手がIB法による修復、補強は考えにくいことです」(前出の吉田医師)

 医療が進歩しても二刀流の肘の不安は尽きない。

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