【陸上】山県、多田、小池の100m予選敗退は波乱か必然か…アテネ以来の屈辱の結果に

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 89年ぶり日本人ファイナリストの夢は、あっけなくついえた。

 7月31日に行われた陸上男子100メートル予選で、日本勢3人が全員予選落ちとなり、1日の準決勝に進めなかった。

■日本最速トリオ揃って予選敗退なぜ

 9秒95の日本記録を持つ山県亮太(29)は3組で10秒15の4着。準決勝進出の条件となる上位3着、予選通過ラインの10秒12に届かず、「チャンスがあるならもう一度走りたいが、一回で出し切るのも能力」と天を仰いだ。6月の日本選手権を制した多田修平(25)は1組で10秒22の6着。小池祐貴(26)は4組で10秒22の4着に終わった。89年ぶりの決勝進出どころか、一人も準決勝に進めないのは、2004年アテネ五輪以来の屈辱となった。

■9秒台一度で煽るマスコミの罪

「準決勝に進むなら山県と思っていましたが、走りが硬かった。スタートは良かったのに後半の伸びがありませんでした」と陸上ジャーナリストの菅原勲氏がこう言う。

「今は9秒台のベストを持つ日本人選手が4人いますが、サニブラウンを除けば、山県も小池(9秒98)もマークしたのは一度だけ。重圧がかかる大一番でベストに近いタイムを出すのは難しい100メートルで、代表選考会の日本選手権で優勝した多田のタイムは10秒15。山県と小池は10秒27でした。つまり、今回のタイムは順当だったといえます。6月の全米選手権は4位までが9秒8台。世界には何度も9秒台を出している選手がゴロゴロいる。むしろ、たった一度の9秒台を常に出せるものだと錯覚させ、『決勝進出だ』と持ち上げ、煽ったマスコミの罪は重いと思います」

 そもそも骨格も筋肉も関節も違う日本人に100メートルは向いていないというのは定説だった。アスリートの体に詳しいフィジカルトレーナーの平山昌弘氏は以前、「日本人はアフリカ系の選手に比べて、足を引っ張り上げる時に使う腸腰筋が少ないので、100メートルなどの瞬発系競技には向いていない。ただ、大陸系の中国人は、筋トレで鍛えられるアウターマッスルではなく、インナーマッスルや股関節の使い方がうまい。先天的な筋肉の違いはいかんともし難い」と日刊ゲンダイで指摘していた。

400mリレー「金」への走力が不安

 悲願の金メダルを狙う男子400メートルリレーにも不安を残す結果である。

 日本陸連はリオ五輪で銀メダルを獲得した後、「個々の走力向上」を強化方針の柱としてきた。9秒台を持つ4人の自己記録を平均すると9秒97。日本陸連は「9秒97平均でベストのバトンパスができれば、37秒09が出る計算」としている。これは米国が19年の世界選手権を制した世界歴代2位の37秒10を上回るという机上の計算だが、実際は自己ベスト10秒01の多田がメンバーに入ることが濃厚だ。前出の菅原氏が続ける。

「今回はそんなに甘くないと思いますね。デーデー・ブルーノという新星が出てきましたが、今回の100メートルに出場した3人の走力が物足りないこと。候補の桐生とサニブラウンが故障を抱えていること。日本はバトンパスの技術にたけていますが、コロナ禍で代表選考会が6月になったため、短距離代表合宿は7月にずれ込んだ。今回は練習不足の不安があります。全員がベストタイムで走って初めて勝負になるところですが、金メダルとなると、やはり難しいと言わざるを得ません」

 この日の準決勝で、蘇炳添(中国)がアジア新の9秒83をマークし、全体トップで決勝へ進んだ。決勝進出ラインは10秒00。10秒00で2組3着に入った米国のエース、T・ブロメルでさえ決勝に進めなかった。

 2時間後に行われた決勝は、ラモントマルチェル・ヤコブス(26=イタリア)が9秒80で金メダルを獲得した。日本人が8人のファイナリストに残る日は来るのだろうか――。 

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