【柔道】阿部一二三&詩 五輪初の同日金メダル “最強兄妹”を生んだDNAを2人の恩師が語る

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 五輪初出場の最強兄妹が快挙を達成した。

 25日、柔道男子66キロ級の阿部一二三(23)、女子52キロ級の阿部詩(21)が、史上初の「きょうだい同時金メダル」を獲得。決勝でマルグベラシビリ(27=ジョージア)相手に優勢勝ちした兄・一二三は、「歴史に名を刻めたというか、歴史を塗り替えられたと思います」と、胸を張った。

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■父親が自主練メニューを考案

 兵庫県出身の一二三は1997年、消防士の父・浩二さん、喫茶店を営んでいた母・愛さんの次男として生まれ、6歳から「兵庫少年こだま会」で柔道を始めた。

 浩二さんは柔道経験がないが、小学生時代に競泳のバタフライで全国大会入賞の経験がある。一二三が強くなるため、男子60キロ級で五輪3連覇した野村忠宏(現解説者)の映像を繰り返し見たり、消防士としての訓練などを参考にしたりして、自主練習用のメニューを考案。近所の公園で背負い投げをイメージしたチューブトレーニングや、バスケットボール大の2キロの球を投げる練習を一緒に繰り返した。ただ単に量をこなすのではなく、柔道の動きを体で覚えることを意識させながら、自主練は時に1日6時間にも及んだという。こうしたトレーニングが、一二三の血となり肉となった。

 幼少期の一二三を知る関係者は、「穏やかな性格」と評する。

 小学時代、道場の中を逆立ちで歩き回るほど高い身体能力を持ちながら、体が小さく、よく泣いていたという。女子に負けたこともあった。小学生時代は全国大会への出場はかなわなかったが、高校2年時の講道館杯で大学生を破り、男子史上最年少で優勝。地道に努力をし続けたことで、才能が開花した。

 一二三は決勝戦の直後、「畳の上でガッツポーズや笑顔を、と思っていたが、いろんなことを考えるとたくさんの思いがこみ上げてきた」と噛みしめるように言った。

 4分間の戦いを終え、金メダルが確定しても、畳の上では正座をして一礼するなど、冷静さを貫いた。

一二三は「努力型」、詩は天真爛漫な「天才型」

 そんな兄とは対照的だったのが、女子52キロ級で日本人初の金メダルをつかんだ末っ子の妹・詩である。

 海外勢との試合で唯一、土をつけられていたブシャール(26=フランス)相手にゴールデンスコアの末、抑え込みで一本を取った。その瞬間、両拳で何度も畳を叩き、ガッツポーズをして喜びを爆発させた。

 2000年生まれの詩は5歳の時、兄の背中を追って「兵庫少年こだま会」に入団した。同会の高田幸博監督によれば、兄・一二三は「努力型」で、妹・詩は天真爛漫な「天才型」だという。

「詩は、兄という一番良いお手本を見ながらマネできたという意味で、天才だなと」(高田監督)

 詩の長所は、優れた「体現力」「コピー力」にある。柔道を習い始めたころは、一二三にくっついてたまに道場へ遊びに行くような感じだったが、兄と同様に負けん気の強さもあって、次第に柔道へのめり込んでいった。一二三や他の練習生の技を見よう見まねで覚える。幼少期に一二三がボウリングをやる姿を見て、重くて持てない球を必死で抱えようとしたこともあったという。

 試合に敗れて泣き崩れることも一度や二度ではなかったが、壁にぶち当たると、兄の試合動画をチェックし、気づいたことをノートにメモし続けた。2人は「特に担ぎ技がよく似ている」(全柔連関係者)と言われるが、詩の柔道には兄のエッセンスが必然的に詰め込まれている。

■「詩は『努力する天才』です」

 阿部きょうだいを小学4年時から指導した夙川学院高(現・夙川高)の松本純一郎監督が言う。

「初めのころは兄ちゃんの方が天才型だと思っていました。兄は相手が大きかろうが、どんどん立ち向かうタイプ。妹はどういう相手なのかじっと観察して戦う計画的なタイプでした」

 詩は小学生の時、練習を嫌がって母の車から降りてこなかったりしたこともあったそうだが、「徐々に『どういう練習態度の人が試合に勝って、どういう人が負けるんだろう』と観察するようになり、それから変わりました。今は技のキレやレパートリー、試合の組み立て方を見ても、(一二三より)詩の方にセンスを感じますね。それでも正直、あれくらいの天才はいっぱいいる。詩は『努力する天才です』」(松本監督)

 妹は兄の背中を追いかけ、そして兄もまた、妹の活躍に大きな刺激を受けた。

 昨年7月に20歳となった詩は今年、新成人を迎え、母・愛さんの赤の振り袖を着た。

 母は今、上京して日体大に在籍する詩と同居し、食生活をサポートしている。一二三もまた、スポーツ報知のコラム(21年3月16日付)で母について「昔から『ラタトゥイユ』(南仏の野菜の煮込み)が好きなんですが、減量の時でも食べられるように、今もアレンジして作ってくれることがあります」と明かしている。

 2人並んでの会見で一二三は、「2人で最高に輝けた一日だと思います」と言った。家族や恩師らに支えられ、柔道界に大きな足跡を残した。

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