エースを蝕むコロナ後遺症…千賀、大野、西勇の調整遅れ

公開日: 更新日:

 先日、阪神の開幕投手が藤浪晋太郎(26)に決まった。エースの西勇輝(30)がキャンプ途中で離脱するなど、調整遅れも影響した。

 プロ野球ではDeNAを除く11球団の開幕投手が決定しているが、いわゆるエースと呼ばれる投手の名前が少ない。

 昨年日本一のソフトバンクは、昨季最多勝(11勝)の千賀滉大(28)が両ふくらはぎのコンディション不良で現在も二軍調整中。昨年の開幕投手で9勝した東浜巨(30)も、昨年終盤に右肩を故障。昨オフには新型コロナに感染した影響もあり、同じく11勝で最多勝を獲得した石川柊太(29)が初の大役を担う。

 ロッテはエースの石川歩(32)が脚部の不安で開幕に間に合わない可能性が浮上。8年目の二木康太(25)が初の開幕投手に抜擢された。

 セでは阪神に加え、DeNAも昨年の開幕投手である今永昇太(27)が昨オフの左肩手術リハビリ中。12球団で唯一、開幕投手が決まっていない。

「例年以上の負担を強いられている」

 そして中日では、昨年、12球団トップの10完投をマークし、沢村賞を獲得した大野雄大(32)が開幕投手を外れる事態となった。今季2度目の実戦登板となった7日の楽天戦は3回無失点も、キャンプからスロー調整を進めてきたこともあり、万全には程遠かった。中日の開幕カードは広島(マツダスタジアム)との3連戦。大野は昨季、本拠地バンテリンドームで9勝2敗、防御率1・14と好成績を挙げている。本拠地開幕となる2カード目の巨人戦にエースをぶつけるという戦略的な要素もあるのかもしれないが、評論家の高橋善正氏は「昨年の反動が気になります」とこう続ける。

「大野は10完投しただけでなく、リーグトップの148回3分の2を投げた。個々の選手の年齢や体力、故障歴によって、消耗度に差があるとはいえ、エースともなると結果に対する責任感が強い。多少の無理を押してでも、チームに貢献しようとする分、心身の疲労がたまりやすいのです。しかも、国内FA権を取得する年だったから、なおさら緊張感をもってプレーしていたはずです」

 昨季の開幕はコロナ禍で6月に延期。2月のキャンプの貯金がなくなり、万全ではない状態でシーズンに突入した。筋肉系の故障者が多く出たし、投手はイニング数を制限するなど対応に追われた。

 万全な状態ではないのに、いざ試合となるとアドレナリンが出る。思ったより球がいかないことで必要以上に力が入り、「前腕が張る」と嘆く投手も少なくなかった。過密日程で試合消化が優先され、各球団からは「試合数は120試合と少ないですが、投手は間違いなく、例年以上の負担を強いられている」との声が多く出た。前出の高橋氏が言う。

「オフが例年より1カ月短い上に、今季は143試合が組まれている。千賀(135回=ポストシーズン含む)や西勇(147回3分の2)のように、多くのイニングを投げたエース投手が故障や調整遅れに見舞われているのは、昨年の疲労が今も体を蝕んでいるか、故障防止のために無理をしてはいけないと自制する意識が働いているのではないか」

巨人・菅野も対岸の火事ではない

 これは巨人の菅野智之(31)ら、開幕投手が決まったエースたちにとっても、対岸の火事ではないという。高橋氏は、「菅野は4日のヤクルト戦で3回無失点でまとめましたが……」と、こう続ける。

「菅野の開幕投手よりも先に、戸郷の開幕2戦目が決定したのを見ても、菅野の調整が遅れていることがわかる。昨季は公式戦から日本シリーズまでフル回転し、オフはメジャー移籍を模索した。交渉のために渡米し、帰国後は14日間の隔離を強いられた。菅野は例年、オフの自主トレで追い込んでから、キャンプインしていますからね。実戦でカーブを多投しているのは、カーブを織り交ぜることで楽にカウントを稼ぎ、打たせて取る投球を目指すことで球数を減らしたいのでしょう。ひいては、スタミナの消耗を抑えられます」

 昨年、国内FA権を取得し、10勝をマークしたヤクルトの小川泰弘(30=119回)は、フォームの微調整を試行錯誤している段階とはいえ、オープン戦含む2度の登板では球数がかさみ、予定イニングを消化できなかった。

■1カ月程度の調整遅れ

「昨年の最多勝(11勝)右腕である楽天の涌井秀章(34=130回)、160キロに迫る快速球を武器に8勝4敗、防御率2・20の好成績を挙げたオリックス山本由伸(22=126回3分の2)あたりも、例年より1カ月程度、調整が遅れている可能性がある。開幕に間に合った場合でも、キャンプで疲労回復を優先して体を追い込まなかった場合、数試合でバテたり、体の切れが良すぎて逆に故障を招くケースも考えられます。現役時代、疲労回復を優先したシーズンは開幕当初から肩が軽かった。しかし、体がそのパフォーマンスに追いつかず、登板3試合目で脇腹を痛めてしまった。投手は繊細な生き物。調整は一筋縄ではいかないのです」(高橋氏)

 コロナ禍の影響をモロに受けている12球団のエースたち。「後遺症」を払拭し、今季も結果を残すことができるか。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    巨人・田中将大「巨大不良債権化」という現実…阿部監督の“ちぐはぐ指令”に二軍首脳陣から大ヒンシュク

  2. 2

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 3

    ドジャースが欲しがる投手・大谷翔平の「ケツ拭き要員」…リリーフ陣の負担量はメジャー最悪

  4. 4

    ソフトB近藤健介の原動力は「打倒 新庄日本ハム」…憂き目にあった2022年の“恩返し”に燃える

  5. 5

    ドジャース大谷翔平に「不正賭博騒動」飛び火の懸念…イッペイ事件から1年、米球界に再び衝撃走る

  1. 6

    巨人・田中将大を復活させる「使い方」…先発ローテの6番目、若手と併用なんてもってのほか

  2. 7

    巨人無残な50億円大補強で“天国から地獄”の阿部監督…負けにお決まり「しょうがない」にファン我慢限界

  3. 8

    藤浪晋太郎に日本復帰報道も、古巣阪神出戻りは「望み薄」…そして急浮上する“まさか”の球団

  4. 9

    阪神・藤川監督が報道陣と連日の長話…“豹変”の裏に株主総会での「リーダーの資質ナシ」痛烈批判

  5. 10

    阪神藤川監督 ドリス再雇用検討のトンチンカン…「だったら育成選手を」「チームに悪影響」の痛烈指摘

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  2. 2

    参政党・神谷宗幣代表が街頭演説でブチまけた激ヤバ「治安維持法」肯定論

  3. 3

    国分太一だけでない旧ジャニーズのモラル低下…乱交パーティーや大麻疑惑も葬り去られた過去

  4. 4

    ホリエモンに「Fラン」とコキ下ろされた東洋大学の現在の「実力」は…伊東市長の学歴詐称疑惑でトバッチリ

  5. 5

    外国人の「日本ブーム」は一巡と専門家 インバウンド需要に陰り…数々のデータではっきり

  1. 6

    「時代に挑んだ男」加納典明(25)中学2年で初体験、行為を終えて感じたのは腹立ちと嫌悪だった

  2. 7

    近藤真彦「ヤンチャでいたい」にギョーカイ震撼!田原俊彦をも凌駕する“リアル・ジャイアン”ハラスメント累々

  3. 8

    「モーニングショー」コメンテーター山口真由氏が5週連続欠席…気になる人間関係と体調を心配する声

  4. 9

    参院選終盤戦「下剋上」14選挙区はココだ! 自公の“指定席”で続々と落選危機…過半数維持は絶望的

  5. 10

    参政党の躍進は東京、神奈川だけにあらず? 地方では外国人規制に“地元ネタ”織り込み支持拡大狙い