著者のコラム一覧
松崎菊也戯作者

53年3月9日、大分県別府市生まれ。日大芸術学部放送学科卒業後は宇野重吉らが率いる「劇団民藝」に所属。その後はコントグループ「キモサベ社中」「キャラバン」を経て、88年にコントグループ「ニュースペーパー」を結成。リーダー兼脚本家として活躍した。98、99年にはTBSラジオ「松崎菊也のいかがなものか!」でパーソナリティーを務めた。現在も風刺エッセイや一人芝居を中心に活躍中。

無人の東京五輪選手村マンションに1室だけつく明かりの怪

公開日: 更新日:

 東京五輪が1年延期になった東京の晴海あたり、夜明々と灯がついているほかのマンション群に埋もれて、そこだけ真っ暗、死んだように眠り続ける一角がある。

 東京五輪選手村。東京ドーム9個分の埋め立て地にぶっ建てた21棟。部屋数なんと3850室。

 びっくりしてはいけない。各部屋に付いてる備品のベッドは段ボール製! いいかい、避難所を連想しちゃいけないよ。リサイクルが利くように特注したモンだト。シーツは4日にいっぺん交換。いいかい、病院を連想しちゃいけないよ。シャワーは付いてるがキッチンはない。選手は食堂で飯を食う。いいかい。学生下宿を連想しちゃいけないよ。これがあんた、夜ともなると真っっっっっ暗。前を通るとゾゾゾと寒けがするぐらい真っ暗闇なのさ、21棟が死んだように。

 実はこの選手村の前を毎晩車で通るんだよ。女房が勤める会社と家の往復、3密を避けるべく、すすんでアッシ~くんをやってるわけさ。

 毎晩真っ暗な選手村の前を通ってて、ふと気が付いた。必ず1室だけ明かりがついてるんだヨ。……誰もいないはずの選手村で、あれは一体誰が何をしているんだろうね?

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