コロナ禍は終息せず…ドラ1が決まらずプロ12球団が大慌て

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火だるまに右肘不安

「オレたちにも球団から活動を自粛するようにという指令が出た。もっとも東京六大学は縮小して延期することが決まったし、大学や社会人のオープン戦も軒並み中止。全国大会もこれからどうなるか分からないし、選手のチェックをしようがないけどね」

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 こうボヤくのはプロ球団のあるスカウト。折からのコロナウイルス禍は終息するどころかヒドくなるばかり。実戦もほとんどなくなったことだし、スカウト活動を停止せざるを得なくなったというのだ。

 プロ球団は通常、ドラフトの上位指名選手から決めていく。今年は早川隆久投手(早大、左左)、山崎伊織投手(東海大、右左)、中森俊介投手(明石商、右左)らが1位候補といわれる。

 早川は高校(木更津総合)、大学で日本代表を経験した左腕。球速は150キロを超える。山崎は3年時に首都大学リーグで2季連続MVPを獲得した右腕。球速はやはり150キロを超え、スライダー、カッター、シュート、スプリットなど多彩な変化球を操る。中森は1年時から3季連続甲子園に出場中。昨年は春夏連続でチームを甲子園ベスト4に導いた。

 3人とも実績は申し分ないが、「彼らが1位候補なのは事実だけど、昨年の佐々木朗希(現ロッテ)や3年前の清宮幸太郎(現日本ハム)ほど飛び抜けた存在ではない。早川は3月の巨人二軍とのプロアマ交流戦で火だるまになったし、山崎と中森は右肘に不安を抱えているというウワサがある。リーグ戦や甲子園大会があれば性格も含めて詳しくチェックできるけど、現段階でそれが可能かどうかは分からない。突っ込んだ調査をしたくてもできないのが実情です」とは前出のスカウトだ。

大舞台や高レベル相手のプレー

 スカウトにとって、全国大会や日本代表の合宿などは選手の実力を見極める格好の機会になるそうだ。在京セ・リーグ球団のある編成担当者がこう言った。

「例えば甲子園大会のような一発勝負、大観衆が注目するひのき舞台でどういったプレーができるのか。緊張する場面でのパフォーマンスはもちろん、ベンチでの表情や細かいしぐさ、試合前の練習態度、監督やナインとの接し方……ふとした拍子に表れる動作や表情まで、スカウトや我々が見るべきチェックポイントはごまんとありますからね。それに全国大会や日本代表合宿になれば、それなりの実力を持った選手がほとんどです。力のある選手がいる中で、どの程度のプレーができるかも重要です。地方大会で3本ホームランを打ったからといって、それをうのみにはできない。極端な話、ヘボ投手ならいくらでも打てますから。弱い学校相手に2ケタ奪三振をマークした投手を素直に評価できないのも同じ理屈です。足が自慢の選手なら、肩の強い捕手がいるチームからでも盗塁ができるのか。遊撃守備が売りなら、強打者の放った強い打球をきちんとさばけるか。全国大会や日本代表合宿は選手の実力を正確に把握しやすいのです」

10人中7人が故障

 プロ側がドラフト1位候補の実力を測りかねている理由はそれだけではない。前記の3人中2人はすでに故障疑惑があるうえ、巨人のドラフト1位ルーキー・堀田賢慎が早くも右肘靱帯を修復するトミー・ジョン手術を受けたようなケースも中にはあるからだ。

 たとえドラフト候補が故障を抱えていたとしても、選手や所属チームの監督は極力、それを隠そうとする。プロ側の評価は指名順位や契約金の金額に直結するから、口が裂けても故障があるなどとは言わない。以前はドラフト前に身体検査をやる球団もあったが、いまは選手サイドの意向もあってそれもできない。

「巨人のケースはとても他人事とは思えない」と、パ・リーグのあるスカウトはこう続ける。

「いまはウチも含めてほとんどの球団が、ドラフト後に選手の身体検査をしています。投手なら肩や肘の状態を把握する細かい検査で、それによると10人中7人くらいはどこかしら故障を抱えている。まったく異常のない選手なんて、まず、いないと思った方がいい。所属チームの監督が選手の実力や状態に太鼓判を押していたのを思い出して、よくもまあ、抜け抜けと……などとじだんだを踏むケースも珍しくありませんからね」

 スカウトが目を皿のようにして甲子園などの全国大会や、日本代表合宿でプレーしている姿をチェックしても、「10人中7人くらいは故障を抱えている」のだ。それすらできないとなると、ほとんど“不見転”で選手を獲得することになる。ドラフト1位なら1億円の先行投資をして“ババ”をつかむ可能性もあるのだ。

 前出の編成担当者がこう言う。

「最近は選手の能力を数値化してドラフトに役立てる球団が増えた。つまりデータ重視ですが、数字だけではどうしても限界がある。故障はもちろん、性格や人間性に大きな“瑕疵”のある選手は、いくら数字が秀逸でもプロで大成しないケースが多いからです。傷の有無を実戦で判断できないとなると、あとはスカウトの人脈に頼る以外にない。日頃から懇意にしているチームの監督や関係者から正確な情報を聞き出すか、彼らを通じてこっそり練習を見せてもらって自分の目で確かめるかでしょう。スカウトがアマ球界にいかに太いパイプを持っているかが重要になる。それでも細かい故障や性格まで把握できる保証はどこにもありませんが……」

 ドラフトの成否は来季以降の戦力を大きく左右する。かくして12球団は不安を抱えながら11月5日のドラフトを迎えることになる――。

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