「和歌山カレー事件」林真須美死刑囚の長男が語る 急死の長女と音信不通だったワケ

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「一報は警察からではなくマスコミからでした。それが事実だと確認できた今も、父(健治さん)も私も(姉の)遺体と対面できていないので、まだ実感がないのが本当のところです」

 7月25日で発生から23年が経過した「和歌山カレー事件」。こう話すのは、林真須美死刑囚(60)の長男・浩次さん(33=仮名)だ。

 真須美死刑囚の周辺が慌ただしい。2度目の再審請求が5月31日付で和歌山地裁に受理された10日後、真須美死刑囚の長女(37)と、2番目の夫との間の娘(4)が関西空港連絡橋から身を投げ死亡。さらに遡ること2時間前に、長女一家が暮らしていた和歌山市内の自宅で、長女と最初の夫との娘(16)が心肺停止状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。

 現在捜査中だが、16歳の娘の死は両親(またはどちらか一方)の虐待によるもの、あるいは、今回の再審請求と関係しているのではとの見方も浮上している。

「母と面会して長女一家のことを話しましたが、『自分が(長女と孫たちを)守ることができなかった』とずっと泣いていました。私はこの2つ(再審請求と長女一家の事件)が同時期に起こったのは偶然で、あくまで長女の家庭の問題が原因ではないかと思っています。長女の車に携帯が残されていたので、これから事実が明らかになっていくと思っています」

 今年還暦を迎えた真須美死刑囚はやせ細り白髪が目立ち、メガネをかけているため、当時の面影は全くないという。

 1998年7月25日、和歌山市園部町の夏祭り会場で4人が亡くなり、63人が急性ヒ素中毒になったカレー事件が発生。10月に真須美死刑囚と夫の健治さん(76)が逮捕された。4人の子どもは児童養護施設で生活を送ることになり、長女は母親代わりだったという。それぞれが別々の道を歩んだ後も連絡を取り合う関係は続いたが、母親の死刑が確定した09年から疎遠になっていった。

普通の幸せを求めるほど母親の存在が足かせに

「名前や出身地を変えて身を隠していても、マスコミに追いかけられる生活を送っていて、女性としての幸せや普通の暮らしを求めるほど、母の子どもであることが大きな足かせでした。父も体が不自由なこともあり、私が母の面会やマスコミの対応をすることで彼女たちに危害が及ばないようにしていく中で、疎遠になっていきました。今回、2番目の姉(36)と妹(27)と久しぶりに電話で話すことができましたが、2人とも精神的に参っていました。こんなことになるくらいなら、お互いもっと連絡を取り合えばよかったと悔やんでいます」

 同じ和歌山市内で父親や浩次さん、そして亡くなった長女はそれぞれ暮らしていたものの、長女とだけは10年以上連絡が途絶えていた。

 真須美死刑囚は動機や自白がないのはもとより、これまでの捜査で決定的な物的証拠が出ていないため、無罪を主張している。今回の再審を担当する生田暉雄弁護士は、「第三者の犯行の証拠」、「4人の死者の裁判上の死因の直接証拠がないこと」、「死因を示す書類がないため、公文書偽造で無効であること」の3つを主張。しかし、新たな決定的証拠が出ない限り、再審で裁判が覆ることは極めて難しいと言われている。

自分の母親が人殺しであってほしくない

「小学5年生だった当時、なぜこんなことになったのか理解できませんでしたが、大人になってから色々調べていく中で、あくまで家族としての実感ではありますが、状況証拠とマスコミ報道による印象論だけで母が犯人にされている可能性を感じています。もし母がやっていないのであれば、このまま見殺しにするわけにはいきません。もし万が一、死刑が執行されるにしても、息子として最後の最後まで見届けたいと思っています」

「母親が人殺しであってほしくない」という思いで日々生きているという浩次さん。現在、2番目の姉と妹は、それぞれが幸せな家庭を築き、他県で暮らしているという。“加害者家族”というレッテルによって差別や不自由な生活を強いられた4人の子どもたち。長女の突然の死は何を暗示しているのか。

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