何もしていない反体制派を弾圧 まだまだ続くプーチン政権は何を恐れているのか?
民間軍事会社ワグネルの蜂起時、モスクワが平穏で、チャイコフスキー国際コンクールも続行した話をこれまで書いた。物騒なニュースを目にして「すわロシア崩壊」と真に受けた日本人もいるだろうが、首都は食料不足もなく、ATMへの行列もなかった。中央銀行は、反乱時に月間の5分の1に当たる1000億ルーブル(約1550億円)の現金が引き出されたと発表したが、無視できるレベルだったという。
自分の日記を見ると、反乱軍の占拠・撤退で南部情勢が目まぐるしかった6月24日、大使館の注意喚起メールは目にしつつ、近所のカフェで日課のランチ。スーパーに翌日寄ると、むしろパンなどが余っていた。庶民はこの時期、郊外のダーチャ(別荘)で菜園の手入れに忙しく、政治的な無関心に拍車がかかる。
「モスクワはいつも能天気なのか」と問われるかもしれないが、それは違う。20日前の6月4日、サドボエ環状道路の一部が封鎖され、中心部に機動隊が集結した。獄中の反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の誕生日にデモが呼び掛けられたのだ。戦時下の弾圧が「奏功」し、参加者は比較的少なかったが、無言でプラカードを持つだけの女性を含めて容赦なく拘束された。