これじゃあロシアに“宣戦布告”同然だ 岸田サミット あらゆる面で「ヒロシマ」を冒涜(上)
正義の戦争などない。平和希求の広島で軍事支援表明の狂気
戦争被爆地で初めて開かれたG7広島サミットは、岸田首相が21日の会見で「歴史的なサミット」と言っていた通り、ある意味で歴史に残るサミットになった。戦争のない平和な世界、そして核兵器廃絶を希求するヒロシマの地で、軍事支援の表明が飛び交い、核兵器の保有も正当化。ほかでもない広島選出の首相があらゆる面でヒロシマを冒涜したと言っていい。正義の戦争などない。半世紀にわたるG7の歩みの中で、史上最悪の恥ずべきサミットだった。
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主要テーマのひとつは確かにウクライナだった。ロシアが仕掛けた侵略戦争は1年3カ月に及び、欧米などから巨額の軍事支援を受けるウクライナは反転攻勢のタイミングをうかがっている。サミットが始まると、オランダなどが提供を検討していた米国製戦闘機F16の供与をバイデン大統領が容認し、G7首脳にウクライナ兵士の訓練開始を伝達。機動性が高く、対地上攻撃にも優れたF16が配備されれば、ウクライナは制空権確保で優位に立ち、戦況を大きく変えるとされる。当初、オンライン参加とされていたゼレンスキー大統領が仏政府専用機で乗り込んでくると、武器供与はさらに加速した。
ゼレンスキーと会談したバイデンは、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や対戦車兵器、装甲車両など3億7500万ドル(約517億円)の追加の軍事支援を約束。会見で「ゼレンスキー大統領からF16を使ってロシア領内を攻撃しないという保証を得た」と釈明していたが、これじゃあロシアに“宣戦布告”したも同然だ。
国際ジャーナリストの春名幹男氏はこう言う。
「岸田首相は言うまでもなく、バイデン大統領をはじめとするG7首脳は、誰ひとりとして停戦に向けたグランドデザインを描けていないことがハッキリした。この間、ゼレンスキー大統領が求める武器供与をずるずると受け入れるばかり。議長国のリーダーだと気負っていた岸田首相にしても、『ヒロシマでG7サミットをやった』という実績が欲しかっただけなのでしょう。そうでなければ、被爆地で核保有や核の傘を認める『核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン』『G7首脳声明』なんて発表できない。初めてG7首脳が揃って原爆資料館を訪問し、平和記念公園で記念撮影する絵はつくれた。教科書にも載るでしょう。その程度の点数稼ぎのために、広島を踏みつけた」
また岸田は「安倍さんもやれなかったことをやった」と高揚し、うまい酒を飲んだかもしれないが、この先、どのツラを下げてお国入りするつもりか。歴史の法廷を待たずとも、必ずやしっぺ返しを食らうことになる。