再審開始が決定した袴田事件(前編)「巌さんは『再審決定』を報じる紙面を食い入るように見ていた」
「袴田さん支援クラブ」代表 猪野待子さん
1966年6月30日未明、静岡市清水区(旧静岡県清水市)のみそ製造会社の専務宅から出火し、焼け跡から一家4人の他殺体が発見された。事件から約1カ月半後、警察は元プロボクサーで従業員だった袴田巌さんを逮捕。公判では一貫して無実を主張したが、80年11月に強盗殺人罪などで死刑判決を受けた。
そして逮捕から半世紀経った今年3月21日、静岡地方裁判所での裁判のやり直しが決まった。
袴田さん(87)と弟の無実を信じ、戦ってきた姉・ひで子さん(90)を支援する猪野待子さんに聞いた。
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再審開始が決定したのは今月13日。第2次再審請求差し戻し審で、東京高裁が検察側の即時抗告を棄却した(東京高検は20日、最高裁への特別抗告を断念)。
14日の夕方、猪野さんは、東京から浜松市の自宅マンションに帰宅したひで子さんと抱き合って、喜びを分かち合った。
「ひで子さんは体中から喜びがあふれていました。巌さんに『いわちゃ、今日すごく良いことがあったの。裁判に勝ったから何も心配しなくていいよ』と声をかけて、東京高裁からの決定文を見せていましたね。巌さんはぽかんとしながら、『ああ』と声を出していました」