自民党は主権者国民に嘘をつくのか? 改憲は「先送りできない課題」ではない
26日、自民党大会で、岸田文雄首相は、同党が2018年に党議決定した改憲4項目を挙げて、「いずれも先送りのできない課題ばかりだ」として、「時代は憲法の早期改正を求めている」と語った。
しかし、その4項目は「先送りできない課題」(首相)などではない。
①「自衛隊の憲法明記」は、要するに、「『必要な』自衛のための自衛隊と憲法に明記する」提案である。しかし、これは、今までは「必要・最小限」だから合憲だと説明してきた自衛隊から「最小限」という制限を取り払う案で、要するに、「海外派兵」を解禁する提案である。しかし、今日の課題は、国際環境の激変に対応して「専守防衛」能力を高めることであり、海外派兵できる軍事大国になることではないはずである。
②「緊急事態条項」の新設は、戦争、自然災害などの緊急事態には、内閣が、行政権に加えて、国会の専権である立法権と財政処分権も掌握して、国民は公の命令に従う義務を負う、内閣独裁体制の確立である。しかし、東日本大震災等の体験に照らして、このような独裁体制が不必要なことは明らかである。
③参院選挙区の「合区の解消」は、要するに、衆参両院にわたって、人口比例の議席配分の原則を緩めて、過疎地にも議席を残す提案である。これは要するに、現に議席を有する議員たちの選挙区の人口が減少してもその議席を残すという、世襲議員の既得権を保障する提案にすぎない。
④「教育の充実」に至っては、現行憲法の下で法律と予算を制定すればできることで、そもそも改憲を必要とすることではない。
岸田首相が言う、「子供たちに日本を着実に引き継ぐために」今、政治が取り組むべき課題は他にある。
まず何よりも、国も国民も明らかに貧しくなってしまった日本を再び豊かにすることである。そのために、大企業を優遇して庶民には厳しい税制を改めて、国民の可処分所得を増やすべきである。さらに、日本の国力をアメリカに献上してしまったような政策を改めて、あらゆる分野で日本の活力を復活させるために、真の規制緩和が必要である。
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