「警視庁 文書捜査官」 麻見和史著
科学警察研究所や科学捜査研究所には筆跡を鑑定する部門があるが、本書に登場する文書鑑定専門の警視庁捜査第1課科学捜査係文書解読班は、架空の組織だ。凶悪事件の時効廃止に伴い、捜査1課では過去の未解決事件について、継続捜査を進める体制を整えており、その一環として過去の捜査資料を整理、分類するために同班を設立することになった。それだけなら「文書管理班」でいいのだが、脅迫状や遺留品などの文書解読を行い、捜査に協力することを踏まえて「解読班」となったのである。
【あらすじ】解読班のメンバーは、主任の鳴海理沙警部補と部下の矢代朋彦巡査部長の2人のみ。
鳴海は31歳で矢代は35歳。女性でしかも年下の上司とどう付き合っていいのか迷う矢代だが、捜査1課の刑事を目指す彼にとって何よりの問題は、連日資料整理に明け暮れ、現場の捜査に関わる気配が一向にないことだ。
そこへようやく現場に臨場するチャンスがめぐってきた。東京の荻窪の空き家で男性の右手首が切断された刺殺体が発見され、現場のゴミ箱にはメモ書きが記されたレシートとアルファベットが印刷された9枚のカードが残されていた。