目標はチェ・ゲバラ 警察庁長官狙撃事件の犯人名乗る老受刑者が貫いた反社会的な生き方
警察庁長官狙撃事件 中村泰受刑者(92歳)
2010年に未解決のまま迷宮入りした警察庁長官狙撃事件には、メディアに犯人は自分だと訴え続けた有名な人物がいる。中村泰──01年に大阪で銀行の現金輸送車を襲撃するなどした罪により岐阜刑務所で無期懲役刑に服す老受刑者だ。
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警察庁の国松孝次長官(当時)が何者かに狙撃されて瀕死の重傷を負ったのは、オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こして10日しか経たない1995年3月30日の朝のことだった。この事件もオウムの犯行とみた警察は、教団幹部らを次々に地下鉄サリン事件などの容疑で逮捕したが、国松長官を撃った犯人だけは検挙できなかった。
その犯人と称する中村受刑者と私が文通するようになったのは13年の秋からだ。当時すでに83歳だった彼は、手紙で犯行動機をこう説明した。
〈地下鉄サリン事件発生後、警察はオウム相手に腰が引け、なかなか容疑者を検挙できずにいました。私はオウムを装って国松長官を殺害し、警察をオウム制圧に駆り立てようと考えたのです。結果的に国松長官が一命をとりとめ、人命を損なわずにオウム制圧を果たせたのは望外の喜びでした〉