小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

杉田水脈政務官の辞任に「保守に対する言論弾圧」は筋違い 嘘をつく自由が認められないだけ

公開日: 更新日:

 LGBTに対する差別発言等で責任を取らずに開き直ってきた杉田水脈・自民党代議士が、ついに追い詰められて、総務大臣政務官を辞任させられた。

 この事実に対して、田母神俊雄・元航空自衛隊幕僚長が、「リベラルによる保守派の言論弾圧」だと発言した。いわく、杉田氏の「『多様性に反対する言論』の自由を認めてこそ本当の多様性ではないか」。

 憲法21条は「一切の表現の自由を保障」している。同時に憲法12条と13条(人権総則)は、「国民は権利を濫用してはならず、権利は公共の福祉に反しない限り最大の尊重を必要とする」とも明記している。だから、形式的には「表現」であっても、それが他者を傷つける場合(濫用)や人々の共存共栄を害する(公共の福祉に反する)場合には、表現の自由としての保護を受けないのである。

 杉田氏の「LGBTは生産性がない」という発言は、明らかに科学的根拠に反する、しかも他者の人格を深く傷つけるものである。

 科学の進歩の結果、LGBTは先天的なDNAの結果であることが明らかになった。つまり、本人に責任のない先天的な個性である。だから、これを理由に批判することは「差別」(憲法14条違反)以外の何ものでもない。

 また、LGBTは子供を産めないから「生産性がない」という発言も幼稚な暴論である。LGBTでない者も、結婚しないor結婚しても子供をつくらないという選択の自由があり、それを実践している者も多い。また、LGBTでも、家族として養子を育てている者も多い。

 要するに、杉田氏の発言は、単なる無知で恥知らずな暴言で多くの人々の人格を傷つけただけである。しかも杉田氏は政権党代議士という立派な公人である。だから、その暴言は本人と所属政党が非を認めて撤回し社会的責任を取るまでは赦されようがないものである。

 以上、今回の田母神氏による杉田氏擁護は筋違いである。

 誤解を招かないように付言するが、私は、田母神氏の国防論や教育論や歴史観には傾聴すべき点もあると思っている。だから、これは同氏に対する人格的な反発ではない。



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