防衛費「1.5倍に」額先行の不合理 防衛の意思と合理的積算こそが必要だ
ロシアと中国と北朝鮮の軍事行動の結果、日本列島を取り巻く安全保障環境が厳しくなったという事実は否定し難い。
しかし、だからといって、首相と与党が「5年以内に防衛費を1.5倍にする」と決定することは、発想として不合理である。
もとより、防衛費とは、現実に想定されるわが国に対する軍事的脅威に対して、必要な部隊の配置や装備等を確認して、それにかかる経費を積算して決めるべきものである。
国家や自治体に限らず、会社や家庭でも、経理に関わったことがある者なら誰でも分かることだが、急に「来年から1.5倍の金を使って良い」などと言われたら、「では司令部を建て替え公用車を買い替えるか」などと考えてしまう。しかし、それは自衛力の向上に資することではない。
ウクライナ戦争で明らかになったことであるが、侵略の対象にされた場合には国民の独立の意思が極めて重要である。だから、政府がなすべき第一は、主権者国民の独立の意思の確認である。次が、現実の軍事的脅威に有効に対抗する具体的手段の構築である。