小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

自衛手段としての「敵基地攻撃能力」は必要なものだが、冷静な議論と運用が不可欠だ

公開日: 更新日:

 まず、わが国は有史以来、日本列島に暮らす私たち日本人により統治されてきた独立主権国家である。その日本が他国の軍事力に支配されるいわれはない。この「民族自決」は確立された国際法の原則である。

 中国によるチベット侵略(1949年~)とロシアによるウクライナ侵略(2022年~)は、民族自決原則に対する明白な違反である。にもかかわらず、軍事的に非力な国が軍事大国から襲われた場合に、独立の維持は非常に困難になる。

 事実、チベットは中国に併合されたままだし、ウクライナは、NATO等の支援を受けて善戦してはいるが、日常生活の全てを失ってしまった。

 このように自国の意向に従わない他国を実際に軍事力を行使して支配しようとする軍事大国2国と隣接しているわが国に、十分な自衛力が必要なことは当然である。

 その自衛力は、わが国を侵略する意思を持つ国が実際に侵攻を始めようとした場合に、わが国の反撃を想定してみたら非常な困難に直面するので侵略を諦める程度のものであることが望ましい。

 そのように考えた場合、他国がわが国に対する侵攻を開始したら、その攻撃の発進基地ひいてはその指揮中枢を攻撃(反撃)できる能力を保持し、その事実を公にしておくことは極めて有効な自衛手段である。

 ただし、第2次世界大戦の反省の下に制定された憲法9条の下で、わが国は「専守防衛」政策を採っている。だから、(1)現にわが国が攻撃を受けていて、(2)他に反撃手段がない場合に、(3)必要・最小限の自衛手段しか行使できない……と決めている。これは一見不自由ではあるが、いまだに野蛮な国際社会の中で、人類が進歩したと自慢してよいほどに紳士的な自制である。

 この制約の下で改めて考えてみても、国際政治の現状に照らして、「反撃能力」の保持は正当な自衛手段である。

 この議論を始めると、「近隣諸国を刺激して良くない」という批判が必ず返ってくる。しかし、わが国の側から最初に他国を刺激したことは戦後一度もない。変な自己不信で正当な議論の足を引っ張るべきではない。



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『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

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