著者のコラム一覧
保阪正康作家

1939年、北海道生まれ。同志社大卒。編集者を経て「死なう団事件」でデビュー。「昭和天皇」など著書多数。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞。本連載「日本史 縦横無尽」が『「裏切りの近現代史」で読み解く 歴史が暗転するとき』(講談社)として好評発売中。

「おまえ、死んだんじゃないのか」青酸カリを飲ませた二等兵が幽霊として…

公開日: 更新日:
ガダルカナル島で米軍の捕虜となった日本軍兵士。疲れ果て、飢えている=1943年2月(C)共同通信社

 この大学教授は軍隊への入隊時の話になると、次第に記憶が鮮明になってくるそうだ。将校に侮辱されたり、下士官に私的リンチを受けたことなどを思い出すと精神のバランスが崩れる。人間としての尊厳を著しく傷つけられた記憶は、帝国大学で学んだ彼のプライドを根本から崩してしまったのだ。

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