片岡健
著者のコラム一覧
片岡健ノンフィクションライター

出版社リミアンドテッド代表。著作に、「平成監獄面会記」、同書が塚原洋一氏によりコミカライズされた「「マンガ 獄中面会物語」」(共に笠倉出版社)など。

1989年北方事件(前編)「殺害した3人の遺体を自宅近くの林に捨てるのはあり得ないと思った」

公開日: 更新日:

無罪となった被告を支えた元町議・田崎以公夫さん

 1989年1月、佐賀県北方町(現在は武雄市)の雑木林で女性3人の遺体が見つかった「北方事件」。3人を殺害した罪に問われた男性が裁判で死刑を求刑されながら、1、2審共に無罪判決を受けて確定する異例の結末になった。この間、男性を支え続けたのが元北方町議の田崎以公夫さん(90)だった。

  ◇  ◇  ◇

 事件発覚から10カ月経った頃のこと。田崎さんは、ある新聞記事を目にしたことがきっかけとなり、北方事件に関わることになった。記事は、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された地元の男性Mさん(当時26)が「女性3人は自分が殺した」と認めたことを伝えていた。だが、その自白内容が不自然だと感じたという。

「Mさんの家は3人の遺体が見つかった林の近くです。人を3人殺し、遺体をすべて自宅近くの林に捨てるというのは、あり得ないと思いました」

 北方町議を7期務めた田崎さんは当時、町議となって5期目。こんな報道が出れば、Mさんの家族も大変だろうと思った。

「町民が苦しんでいるのを放っておけない」とMさん宅を訪ねると、案の定、家は報道陣に取り囲まれていた。Mさんと一緒に暮らしていた母親と妹は家の中で憔悴していたという。

 この時、Mさんが獄中から母親に宛てた手紙を見て、田崎さんは衝撃を受ける。手紙には、連日深夜まで取り調べを受け、刑事らに叩かれたり蹴られたりしてウソの自白に追い込まれたことが、切実な筆致でつづられていたからだ。

「手紙の内容は本当だと直感し、大変なことだと思いました」

 田崎さんは、すぐに母親と一緒に刑務所までMさんの面会に赴いた。Mさん本人から直接、「やっていない」と聞かされ、改めて「真犯人ではない」と確信したという。

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