ゴルビーにありプーチンにないもの 「終身大統領」は幸せか?
「存在しない国」。モスクワ中心部にこんな珍しい名前のレストランがある。向かいの歴史的建造物で9月3日、大政治家の葬儀が営まれ、棺が墓地へ出発した。8月30日に死去したゴルバチョフ元ソ連大統領。ロシアのプーチン大統領は参列せず、彼の言う「20世紀最大の地政学的惨事」を招いた男への冷遇と受け止められた。店名は故人への当てこすりにも聞こえる。
■若さで期待背負った2人
外国で愛されたゴルビーは、自国で評価が割れた。それもそうだろう。米国と張り合う超大国の崩壊をみすみす許し、ロシア語で言うスムータ(大動乱)に匹敵する混乱を生んだ。ウクライナ侵攻は断じて容認できないものの、そもそもソ連が続いていれば、歴史は違う道を歩んだはずだ。
ソ連人は最後の指導者に幻滅し、ロシア国民はエリツィン元大統領にも愛想を尽かした。自国に不利な形での冷戦終結に、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大……。これらが生んだ世論の「負のエネルギー」を吸い上げ、元スパイは怪物となったのだろう。ポピュリストと独裁者が紙一重というのは、この国にも当てはまる。