小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

敵基地攻撃能力を考える(8)自衛隊の存在理由を直視し改めて専守防衛に徹するべきだ

公開日: 更新日:

 安全保障論議に参加していて不思議に思うことのひとつは、いわゆる護憲派の人々が抱いている自衛隊に対する「敵意」のような感覚である。そこには自衛隊が戦争を起こすという前提がある。しかし、軍隊の統帥権が独立していた大日本帝国の時代は別にして、日本国憲法の下で戦争を招くのは愚かな政治であり、自衛隊はその手段に過ぎない。だから、護憲派が批判すべきは、憲法の趣旨を超えて自衛隊を誤用しようとする今の政権の姿勢であろう。

 その点で、現実にわが国の独立と私たちの自由と民主主義を守ってくれている自衛隊を批判することは筋違いである。

 ところで、最近は変に勇ましい政治家たちが自衛隊の海外派兵に熱心である。しかし、そこには、日本民族が本来的に海外派兵に適していないという自覚がなさ過ぎる。

 歴史的に何千年もの間、事実上の鎖国をしてきた日本人は、大陸人に比べて外国語と異文化に不慣れである。事実、過去2回の海外派兵(文禄慶長の役と大東亜戦争)で大失敗を経験している。それが、何百人、何千人という単位で武器を持って海外に派遣された自衛隊が大きな事故を起こさないと考える方が不自然である。それは、結局、人命と資金を失い新しい敵を招くだけであろう。

 憲法9条は、2項で、国際法上の「戦争」の手段である「戦力(軍隊)」の保持と「交戦権」の行使を否定している。だから、わが国は憲法上、海外派兵はしようがない。

 そのうえで、国際法上の国家の自然権である自衛権に基づき、外敵が侵入してきた場合にそれを排除するのが、「警察予備隊」(この憲法上の根拠は65条「行政権」である)という出自の自衛隊の役割である。しかも、自衛隊が、日本人の職能集団として高い能力を持っていることも明らかである。

 今、まさかのウクライナ情勢に触発されて、わが国の政治の現場では浮足立った議論が始まっているが、それこそ危険である。

 むしろ、今こそ冷静に、改めて自衛隊の存在理由(有用な役割)を確認して、「専守防衛」の質を急ぎ高める議論に徹すべきではなかろうか。 (おわり)



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