敵基地攻撃能力を考える(7)今、日本が採るべき道は専守防衛の質を高めることだ
ロシアのウクライナ侵攻に驚かされて、わが国で急に過激な国防議論が始まった。しかし、その実態は、事実の裏付けのない、憲法も国際法も無視した乱暴なものである。
しかし、現在の国際情勢の中で、ロシア、中国、北朝鮮と隣接したわが国の独立を守り、国民の自由と民主主義を守る方法を具体的に考えてみることには意義がある。それは、極東の危険地域にあって現実に日本の独立を守ってきた専守防衛の自衛隊と日米安保体制を急ぎ、点検・補強する作業であろう。それには、改憲も国際法を無視することも要らない。
日米安保体制については、アメリカのアフガニスタンからの撤退とウクライナでの参戦拒否の先例を引いて、日本有事の際にアメリカは助けてくれないのではないか? という疑問が広く流布されている。しかし、それは明らかな誤解である。
アフガニスタンは、20年前に米軍によりタリバンから解放された後に自助努力せず堕落した現地政府がアメリカに見捨てられただけである。ウクライナでは、アメリカは自由と民主主義諸国の代表として「参戦」以外の最大限の支援を惜しんではいない。ただ参戦しないのは、現にアメリカおよびアメリカ国民に対する攻撃を受けていないからである。
■アメリカは日本を見捨てることはできない
その点、日本有事の際には在日米軍基地こそが攻撃を受けるわけで、アメリカが自動的に参戦しない理由はない。また、日本列島と台湾はアメリカにとって自由民主主義陣営の橋頭堡として太平洋を守る位置にあり、そういう意味でもアメリカは日本を見捨てることなどできないはずである。
他方、現在の自衛隊の最大の弱点は、何よりも、弾薬の備蓄が少ないことであろう。ウクライナの現実が教えてくれたように、高い士気とそれなりの武器を持っていても、弾丸が不足しては戦いようがない。この弾丸の備蓄に憲法上の問題はない。
また、アメリカ製兵器の爆買いは、財政規律の点からも兵器の継続調達のためにも不合理である。だから、国産兵器の調達比率と単価を上げて、兵器の更新とわが国の兵器産業の存続を確保すべきである。
このように、できることですべきことはある。 (つづく)
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