小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

敵基地攻撃能力を考える(6)「核兵器保有論」の出現

公開日: 更新日:

 ウクライナを支援するNATO加盟国の参戦を牽制するためにロシアが核兵器の使用に言及した現実に直面して、「わが国も核の抑止力を保有しろ」という主張が表に出てきた。単純と言えば単純、素直と言えば素直な反応である。

 しかし、核保有国も、先制第一撃で敵国を完全に滅ぼせるわけではなく、必ず同様の報復攻撃を受けることは承知している。そして、広島・長崎の被爆の悲惨な実態が示しているように、核戦争は人類と地球の破滅の始まりである。だから、事実、第2次世界大戦後、核兵器は一度も実戦で使用されていない。つまり、米ロが大量に核兵器を保有して対立することにより、皮肉にも、現に核の抑止力が働いている。

 だから、今、日本で「核兵器保有論」を政権与党が主張することは、印象としては、単に「日本の軍国主義の復活」以外の何ものでもない。

 核兵器は、作れるが作ってはいけない兵器である。なぜなら、それは人類と地球環境のDNAに不可逆的な不幸を刻むものだからである。

 わが国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器が文明の「禁じ手」であることを実証的に世界に説明できる大国である。そして、それこそが核抑止力の向上に有効に寄与できる日本ならではの特別な立場である。それが核保有に前向きになろうとは、単に「愚か」である。しかも、それは非核三原則と原子力の平和利用という国是にも反する。

 さらに、アメリカが日本周辺に核兵器保有部隊を展開していることは公知の事実である。しかし、その核兵器を日本が「共有」するという発想自体に無理がある。つまり、米軍が日本で事実上の治外法権を享受している地位協定と航空管制権からも明らかなように、アメリカは日本を対等な国家とは見ていない。だから、アメリカが核兵器の運用にわが国を関与させることなどないと考えておくべきである。

 それはそれとして、わが国に既に10カ所以上も存在する原子力発電所は、そこが通常兵器で攻撃された場合でもわが国に甚大な放射能被害を及ぼすことになる。だから、その防護体制を強化することは、専守防衛の立場からも喫緊の課題である。



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