共産党・志位委員長の講演に思う「理想」を持つ自由と「現実」の責任
共産党の志位委員長が、「日本が侵略を受けたら自衛隊を活用する」と語ったことが、いまだに批判の対象になっている。
私は、7年ほど前であったと思うが、都内の公開講演会で同委員長の話を聞き納得できたのだが、その趣旨は次のものであった。
「憲法(前文・9条)の趣旨は非戦による平和であり、そういう意味では自衛隊と日米安保の現状は憲法に反するから将来的には解消すべきであろう。しかしそれは『理想』であり『現実』がそれを許すとは思わない。だから、現状で日本に対する侵略が行われたら、自衛隊を含むあらゆる手段を用いて自衛権を行使する。そして、憲法9条に基づく平和外交の輪を広げて行き、将来、『国際情勢』がそれを許す時が来た際に、『主権者国民』の多数決で自衛隊と日米安保の解消に向かう」
私はそれを聞いて、理想や夢を持つ良心の自由(憲法19条)は誰にでも保障されているし、「理想」と「現実」のギャップを承知の上で理想の追求を諦めないからこそ、野獣でなくて人間なのだ、と思った。
それはそれとして、長年、憲法論議に参加していて不思議に思うことがある。それは、9条護憲派の人々の多くが、「軍隊が戦争を起こす」と思い込んでいるように見えることである。しかし、戦争は愚かな政治が起こすものであろう。だから、平和主義者は、軍事力を敵視するのではなく、軍事力を誤用しかねない政治を諫め続けるべきである。
そして、他国の愚かな政治がわが国に対する侵略を試みた場合に、わが国の軍事力(自衛隊)と価値観を共有する他国からの支援こそが日本国民の自由と民主主義を守ってくれるという事実を、今回、ロシアのウクライナ侵攻が分かりやすく教えてくれた。
だから、この際、9条護憲派の人々は、直接に自衛隊の存在を批判していると思われかねない主張を整理して、自衛隊を誤用(例えば「海外派兵」)しようとする政治の愚かしさを端的に批判するとともに、「専守防衛」に徹する自衛隊の存在理由を見詰めてみるべきであろう。いずれにせよ、護憲派内でもっと自由な議論が必要である。
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