共産党・志位委員長の「自衛隊活用論」は党内で議論して整理すべきだ
共産党の志位和夫委員長が、「日本が侵略を受けたら自衛隊を活用する」旨を語って、論争になっている。
私自身は少なくとも7年前に公開の講演会で同旨の発言を聞き、それなりに納得できているが、なぜか、今回は集中砲火を浴びている。
私の手元に、全国革新懇の2月28日の代表世話人会の議事録があり、志位発言は次のようになっている。
〈9条の下でも自衛権はある。自衛権は、国民の自然の(つまり、条文上の根拠の要らない=小林注記、以下同じ)権利で、不当な侵略を受けたら排除するためあらゆる手段を用いて頑張るというのは、9条の下でも当然認められるべきだと最初から言ってきた。(だから、当初は自衛権も放棄したように政府が説明した9条に共産党は反対した。だから)侵略を受けたら自衛隊も活用するというのも党の方針だ。9条は無抵抗主義でも自衛権の放棄でもないが、(2項が国際法上の戦争の手段としての「戦力」と「交戦権」を否定しているので)「常備軍」は禁止している。自衛権と常備軍はイコールではない。(自衛隊は警察予備隊として発足し、自衛隊法は諸国の軍法とは異なり、「警察比例の原則」が前提で、2項の故に専守防衛の原則もあり、軍隊というよりも、警察の能力を超えた侵害に対応する能力を備えた日本独自の特殊警察であろう)〉
私は、この志位発言にはそれなりの説得力があると思う。その立場は、要するに9条の下で日本は「侵略者」になることは禁じられているが、だからといって「無抵抗で征服される者」になるいわれはない……という極めてまっとうなものである。
しかし、各地の駅頭でロシアの侵略戦争に反対する街宣をしている護憲論者の主張は、「9条に基づいた平和外交」が中心で、今、現実にウクライナで武力を用いて抵抗している人々の努力と犠牲が、世界的な「自由民主主義対専制軍国主義」の構図をつくった現実を直視していないように見える。
だから、共産党は今、党内で上述の志位発言について討議して理解を深めるべきで、正しい方向への変化をためらうことはない。
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