小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

「自衛隊」明記案の嘘と危険性 「海外派兵合法化」の意図を隠している

公開日: 更新日:

憲法改正問題を真面目に考えよう(3)

 この改憲案の提唱者・安倍元首相は、これは、自衛隊違憲論の根を断つだけで「9条の意味は何も変わらない」と語っていた。しかし、それは事実ではない。

 まず、前提問題として現行9条の意味を確認しないと、それが変わるのか「変わらない」のか? 判断しようがないのでそれを行う。

 9条1項は「国際紛争を解決する手段としての戦争」を放棄している。つまり、パリ不戦条約(1929年)以来の国際法の用語としての「侵略戦争」のみを放棄している。だから、日本は国家の自然権としての自衛権は放棄していない。

 しかし2項で、日本は、国際法上の自衛「戦争」を行う条件としての「戦力」(軍隊)の保持と「交戦権」の行使を自らに禁じているので、当然に海外派兵を伴う自衛「戦争」はできないことになっている。

 とはいえ、現実に他国軍が攻め込んできた場合には、憲法65条(行政権)の一環である第2「警察」である自衛隊が対処する。自衛隊は警察である以上、国内とその周辺にしか管轄権がなく、9条2項の制約もあり、当然、「海外派兵」はできない。これが「専守防衛」の意味でそれは「必要・最小限の自衛」と説明されてきた。

 今回の自民党の提案は、9条の二として「必要な自衛のための実力組織として、自衛隊を保持する」と明記している。

 現9条2項と新9条の二が矛盾した場合には、「新法が旧法を改廃する」の原則どおりに新法が優先する。だからこの提案は、現行憲法下で政府が一貫して「必要・『最小限』」の自衛だと説明してきたものを、「何も変わらない」と言いながら、「必要」な自衛に拡大するものである。つまり、これまでは「必要でも『最小限』を超えるからできない」としてきた海外派兵を「必要だからできる」と合憲化する改憲案である。

 これを「これまでと何も変わらない」と言うことは、明白な嘘である。国の存立にかかわる問題について公然と嘘をつく政治家など信用できない。まずは、「専守防衛」の政策としての是非から堂々と論じ合うことから始めるべきである。


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