溝口敦
著者のコラム一覧
溝口敦ノンフィクション作家、ジャーナリスト

1942年7月5日生まれ。早大政経卒 徳間書店、博報堂勤務を経て、フリージャーリストに。暴力団や闇の世界に深く食い込んだド迫力ルポには定評がある。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞、日本ジャーナリスト会議賞受賞。『暴力団』(2011年)がベストセラーに。

工藤会トップへの死刑判決について思うこと 犯罪の直接的な証拠はなかった

公開日: 更新日:

 ちょっと古い話になるが、今年8月24日、北九州市の暴力団、工藤会のトップ野村悟被告に死刑判決が言い渡された。

 この判決理由には、野村被告が犯罪を指示・命令したという目撃証言や受命証言、犯罪に使われた拳銃といった物証もなく、単に間接的な証言や状況証拠があるばかりだった。

 ある人間が確実に殺ったという直接的な証拠なしに、その人間を極刑に宣していいものだろうか。常識的には、そんな判決が許されるなら冤罪を呼び込む、絶対避けるべきだ、となろう。

 私もそう思う。被告が暴力団の首領だからといって、公正な裁判を受ける権利が否定されてはならない。法の下の平等は誰に対しても適用されるべきで、こんな判決が許されるなら、やがては宗教界や政界、革新運動などにも拡大され、戦前のような暗黒社会が再来することになる。

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