溝口敦
著者のコラム一覧
溝口敦ノンフィクション作家、ジャーナリスト

1942年7月5日生まれ。早大政経卒 徳間書店、博報堂勤務を経て、フリージャーリストに。暴力団や闇の世界に深く食い込んだド迫力ルポには定評がある。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞受賞、日本ジャーナリスト会議賞受賞。『暴力団』(2011年)がベストセラーに。

分裂した山口組の調停を巡る奇っ怪な話「調停できる傑物がいる」

公開日: 更新日:

 山口組から分派して抗争した一和会の会長・山本広は1989年3月に一和会を解散し、自らもヤクザ世界から引退した。

 山口組と一和会の間に入って調停したのは稲川会と会津小鉄会だった。当時、国会で暴力団対策法の論議が始まり、ヤクザ世界では、いいかげん山一抗争を収めないと、暴力団世界にとんでもない悪法が施行されるという危機感が広がっていた。

 いわば暴力団世界を代表する形で稲川会と会津小鉄会が調停に動いたのだ。当時、山本広は稲川会本部長・稲川裕紘に付き添われて山口組本家を訪れ、謝罪している。

 つまり、ありていにいえば稲川会と会津小鉄会が山本広の命を保証したから、山本広は解散と引退を受け入れた。一和会はそれまでに組員17人を殺されながら、親分の山本広は命の保証がなければ引退をのまなかった。

 今、神戸山口組の落城はほぼ確定し、井上邦雄組長は「もはやこれまで」と潔く切腹しなければならない立場だが、昔の山本広組長と同様、「命と安全の保証」が欲しい。それなしには引退はのめない。

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