教師がやり甲斐を感じられる環境整備が急務だ
10年くらい前の話。大阪市内で中学教師の友人と遅くまで飲んでほろ酔い気分で帰る途中、友人の携帯に電話がかかってきた。応対した友人が教師の顔になり、「おお、わかった。先生が今から行くから待っとれ」と言った。電話を切ると、警察署に行くという。学校の生徒が補導されたので引き受けに行くという。
私はタクシーを拾って警察署に向かう彼を見送った。日付は変わろうとしていた。教え子とはいえ、当然のように警察署に向かった彼に、頭が下がった。
28日、「教員による性暴力防止法」が成立。わいせつ教師の経歴をデータベース化し、失効した教員免許を再交付する際にハードルを設けるという。子を持つ身としては、子供の安全を守る法律の必要性に異論はない。しかし「学校における子供の人権を考える会」(以後、「考える会」)は法律の成立を歓迎しつつ、「冷静かつ慎重な議論も」必要だとしている。被害にあった子供をどう守るか、被害を知った教師がどう対応するかなど、整備する課題は多いとの指摘は傾聴に値する。
別の視点も考えたい。報道によると2019年度に児童生徒へのわいせつ行為で教師121人が免職になったという。しかし、公立の小中高の教師は養護学校も含めて90万弱。0.01%ほどだ。もちろん、教師のわいせつ事件が大きく報じられることは仕方ない。発覚しないケースもあるだろう。しかし、それが教師の全体像でないことも事実だ。