景気動向の指標「工作機械受注額」の前年割れをどう読み解くか
景気は果たしていいのか、悪いのかそれとも「適温」なのか──。何とも悩ましい展開が続く。
「3~6カ月先の設備投資や景気の動向を占う」(経済産業省幹部)とされる工作機械受注額の前年割れが止まらない。日本工作機械工業会(会長・稲葉善治ファナック会長)が先にまとめた統計によると、8月の受注額(速報値)は1147億円強。前年同月実績を17.6%下回った。
前年実績を割り込むのはこれで8カ月連続。業界関係者からは「中国経済の減速感が強まっているうえ、米欧の利上げなどの余波で(受注の約7割を占める)外需が盛り上がりに欠ける」といった悲鳴も上がる。
内需も冴えない。8月はマイナス31.1%の356億円。業界大手、DMG森精機幹部のひとりは「市況低迷で半導体製造装置向けの回復が遅れている。EV(電気自動車)関連も期待されたほどの動意はない」と明かす。
■「悲観する必要はない」の見方も
とはいえ工作機械受注では月間1000億円が「好・不況の分かれ目」(金融筋)ともいわれる。その点で言えば現行水準はそれをある程度上回っているわけで、業界内には「ちょっとした調整局面。悲観する必要はない」との見方も少なくない。