近鉄百貨店(下)「外商」は店売りのオマケだった…窮余の一策が収益の柱に育つ
大都市の百貨店は、かつては中国人観光客による爆買いで潤った。だがコロナ禍でインバウンド(訪日外国人)消費は蒸発、百貨店は赤字経営に転落した。
各社はインバウンド消費への依存から脱却すべく、EC(電子商取引)へシフトしたが、期待外れに終わる。
そこで、伝統的なビジネスモデルである外商の強化に乗り出した。当初は、窮余の一策だった。
三越伊勢丹ホールディングスが個人向けの外商に本腰を入れたことが、業界の話題になった。2022年4月、外商組織を再編し、外商統括部を新設した。
個人外商と法人外商、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店などに分かれていた組織を統合。それぞれの品揃えを掛け合わせて、商品提案力の幅を広げた。顧客から吸い上げた好みやニーズなどをデータ化し、共有することで、外商部の個人の人脈に頼っていたビジネスをやめて、チームでセールスに当たる体制を構築した。
三越伊勢丹の22年3月期の個人外商売上高は790億円。コロナ以前の20年3月期(716億円)と比較して2ケタの増加となった。外商売上高790億円は22年全国百貨店店舗別売上高ランキング(日経流通新聞22年8月24日付)によると、そごう・西武の巨艦店、そごう横浜店(949億円)に次ぐ10位の規模だ。23年3月期は9%増の860億円を見込んでいる。