UBSによるクレディ・スイス救済買収は今後もまだモメる?
破綻の危機に瀕していたクレディ・スイスがスイス政府の要請によりUBSに救済買収された。
クレディ・スイスは世界の「G-SIBs」と呼ばれる「グローバルなシステム上重要な金融機関」に位置付けられており、総資産はスイスの国内総生産の7割超に相当する規模を持つ。破綻すれば影響はリーマン級となりかねないと懸念されていた。それだけにスイス国立銀行(中央銀行)は預金流出による資金ショートを防ぐため潤沢な流動性資金を供給するなど、国を挙げての救済に乗り出していた。UBSによる買収は金融システムを維持する最終手段であったと言っていい。
だが、薄氷の思いで守られた金融システムだが、クレディ・スイスショックの後遺症は尾を引きそうだ。クレディ・スイスが発行する株式は保全されたが、「AT1債」と呼ばれる特殊な永久劣後債が無価値化したためだ。その額160億スイスフラン(約2.3兆円)。莫大な損失を被った「AT1債」を保有していた投資家たちは訴訟に動こうとしている。
また、市場関係者によると、「UBSはクレディ・スイス買収を4月末までに完了させることを目指しており、顧客および従業員を維持したい考えのようだが、数十カ国の規制当局による承認が必要で、長期化しかねない。その間、買収そのものが宙に浮く可能性も捨てきれない」との指摘もある。
その理由は、「今回の買収は金融システム維持のためスイス政府が短期間に強引にまとめた面があり、UBSは詳細なデューデリジェンス(資産査定)は行っていないのではないか。加えて、クレディ・スイスから国内外の富裕層など超優良顧客が流出している。UBSが買収額でごねる可能性がある」というものだ。