【金丸脱税事件】異聞(14)検察と国税の結束強めた伊藤栄樹と磯辺律男
大所帯の国税当局では時々、不心得者が出る。検察が、国税マンを収賄容疑で逮捕することも珍しくない。多くは国税側が端緒をつかみ、両機関が腹を合わせて事件にするが、検察が問答無用で国税局を捜索し両機関が険悪な関係になったこともあった。
1968年の日通事件である。政府の食糧輸送を独占しようとした日通から賄賂を受け取ったとして与野党の国会議員2人が収賄の罪に問われた。当時の検察のエースといわれた栗本六郎副部長指揮下の特捜部が、東京国税局が摘発した関連会社の脱税事件から、紡ぎ出した。
この捜査の過程で、複数の国税局調査部の職員が税務調査をした日通側から接待を受けていたことが発覚。特捜部は、通告なしに職員5人を逮捕。国税局を捜索した。国税側は大打撃をこうむった。
現金授受はなく、都内の飲み屋や出張先の温泉で接待を受けた程度だったが、特捜部は容赦しなかった。当時の特捜幹部は「たいした事件ではないから、どうでもいいと思っていたが、脱税捜査には縁のない現場の検事が国税職員の腐敗を許さなかった」と振り返った。
検察と国税の関係は冷え込み、敵対する関係になった。
両者の関係を修復したのが、後に検事総長になる伊藤栄樹と国税庁長官になる磯辺律男だったとされる。