村山治
著者のコラム一覧
村山治ジャーナリスト

1950年、徳島県生まれ。1973年に早稲田大学政治経済学部を卒業し毎日新聞社入社。1989年の新聞協会賞を受賞した連載企画「政治家とカネ」取材班。1991年に朝日新聞社入社。東京社会部記者として金丸事件、ゼネコン汚職事件、大蔵省接待汚職事件などの大型経済事件報道に携わる。2017年からフリー。著書に『特捜検察vs.金融権力』(朝日新聞社)、『検察 破綻した捜査モデル』(新潮新書)、『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋)『工藤會事件』(新潮社)など。

【金丸脱税事件】異聞(9)移動されていた金庫。捜査情報が漏洩していたのか?

公開日: 更新日:

 1993年の3月6日午後3時32分、衆院予算委員会で予算案通過。午後4時2分、本会議開始で議場が閉鎖されるのを待って特捜部は捜索令状を請求した。捜索は午後4時半に始まった。

 金丸らの身柄拘束以上に特捜部長の五十嵐紀男が神経を尖らせたのは、金丸の脱税容疑の物証となる20数億円相当のワリシンを金丸側から確実に押収することだった。捜索令状を早く請求すると、裁判所で記者に情報が漏れる恐れがあるとしてぎりぎりまで令状請求をしないことにしていた。

 まもなく、衝撃の報告が飛び込んできた。内偵捜査では、金丸のワリシンは、国会近くのパレロワイヤル永田町ビル11階にある金丸の個人事務所の金庫に保管されているはずだった。ところが、その金庫が影も形もなかったのだ。

 五十嵐は真っ青になった。金丸側がそのワリシンを自民党の資金団体、国民政治協会に持ち込み、「寄付」として処理してしまうと、「政治資金」の性格が強くなり、脱税に問うことが難かしくなる恐れがあった。訴追できなければ、「検事総長以下、ラインの幹部は全員クビ」(五十嵐)だった。

 捜索班の検事に「見つかるまで帰ってくるな」と電話で怒鳴った。普段は温厚な五十嵐の鬼の形相に、捜査指揮所に応援派遣されていた国税局の査察官らは震えあがった。

 若手の特捜検事、北島孝久が金丸の二男から、パレロワイヤル4階の別の部屋を借りて金融債の入った金庫を移したことを聞き出し押収したのは、高橋武生東京地検次席検事が金丸らの逮捕発表文を読み上げた後だった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2
    平野紫耀の"CM放送継続"にティアラ歓喜 ジャニーズに忖度しない外資系企業のドライな対応

    平野紫耀の"CM放送継続"にティアラ歓喜 ジャニーズに忖度しない外資系企業のドライな対応

  3. 3
    オリラジ中田敦彦が仕掛けた「松本人志批判」の余波、主張に賛同する人・納得しない人の割合

    オリラジ中田敦彦が仕掛けた「松本人志批判」の余波、主張に賛同する人・納得しない人の割合

  4. 4
    就活選考解禁の6月1日に“異変”…大学生協ですでに「内定辞退セット」が売れるワケ

    就活選考解禁の6月1日に“異変”…大学生協ですでに「内定辞退セット」が売れるワケ

  5. 5
    中田敦彦に松本人志を批判する資格はあるのか? 関係者から失笑&総スカンされるワケ

    中田敦彦に松本人志を批判する資格はあるのか? 関係者から失笑&総スカンされるワケ

  1. 6
    侍J「ポスト栗山監督」最適な3人の名前…後任候補にイチローや松井秀が浮上するバカバカしさ

    侍J「ポスト栗山監督」最適な3人の名前…後任候補にイチローや松井秀が浮上するバカバカしさ

  2. 7
    ジャニー喜多川氏の性加害を暴いた“禁断の書”の中身…超人気アイドルが「ジャニーさんが、ジャニーさんが…」

    ジャニー喜多川氏の性加害を暴いた“禁断の書”の中身…超人気アイドルが「ジャニーさんが、ジャニーさんが…」

  3. 8
    岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”

    岸田首相も公邸ドンチャン忘年会に参加! 寝間着姿ニンマリ写真流出で官邸は“犯人探し”

  4. 9
    「松本人志オワコン説」は本当か? ケンコバの元相方が長年の“悪しき慣習”を痛烈批判

    「松本人志オワコン説」は本当か? ケンコバの元相方が長年の“悪しき慣習”を痛烈批判

  5. 10
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭