「旭化成」が過去最悪の赤字…高値掴みでポリポア買収も、アテがはずれ大損
「我々が想定した見立てと随分違った結果になった」。先週8日の記者会見。工藤幸四郎社長はこう釈明して首を垂れた。
2023年3月期の最終損益が1050億円の赤字に転落すると発表した総合化学大手の旭化成。最終赤字は退職給付関連費用の一括償却などで上場来初の損失(668億円)計上となった03年3月期以来20年ぶり。赤字額は過去最悪となる。
赤字転落の主因となるのは車載電池用のセパレーター(絶縁材)を手掛ける米国子会社ののれんや無形資産の減損処理だ。15年に22億ドル(当時のレートで約2600億円)を投じて買収したものの、思うような成果が上がらずに業績が低迷。1850億円もの減損を強いられる。
旭化成は2月8日、石油化学製品の市況悪化や半導体不足の長期化などで今3月期の最終利益予想を当初の1290億円から700億円に下方修正したばかり。そこからわずかひと月ほどで巨額の減損リスクが顕在化したことになる。
■乾式市場が広がらず
セパレーターはリチウムイオン電池の中核部材で「湿式」と「乾式」がある。旭化成は湿式に強みを持つが、電気自動車(EV)化が進展するにつれ、今後は製造コストが安上がりで済む乾式が主流になると判断。乾式を得意としていた、ニューヨーク証券取引所上場のポリポア・インターナショナルの買収に踏み切った。ところが「乾式の市場が想定通りには広がらず、完全にアテが外れた」(関係者)という。