植田・日銀新総裁候補「所信聴取」で露呈…物価高への“大甘”認識が庶民を苦しめる
「基調的な物価上昇率は、2%を持続的安定的に実現するまでには、なお時間を要する」
「金融緩和を継続し、経済をしっかり支える」
次期日銀総裁候補の植田和男氏が先週24日の衆院に続き、27日参院での所信聴取に臨んだのだが、発言は相変わらずの黒田現総裁の大規模緩和路線の踏襲だった。
植田氏が緩和を継続するという安心感と、物価関連統計が市場予想を上回った米国で利上げが長期化するとの見通しが相まって、きのうの円相場は一時1ドル=136円台半ばまで円安が進行。マーケットは安心して円売りを続けられると判断しているようだ。庶民にとっては物価高に直結するだけに痛い。
衆参2日間の所信聴取で分かったのは、植田氏がアベノミクスを“失敗”と見ておらず、庶民を苦しめている物価高についての認識が大甘なこと。「1月のインフレ率がとりあえずのピークとなる」「2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下する」と断言していた。
まさに黒田氏と同じで、「今の物価高は原油などの輸入物価高によるもの。輸入物価が落ち着き、政府の補助でエネルギー価格が下がればインフレも低下する」との認識なのだが、黒田日銀はこの1年以上、物価見通しを外し続け、展望レポートを出すたびに上方修正を繰り返してきた。植田氏も同じ轍を踏むのではないか。
というのも、今の物価高の要因は輸入物価やエネルギー価格に限らないからだ。24日に発表された全国の1月の消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)が41年4カ月ぶりに前年同月比4.2%の上昇だったことが大きなニュースになったが、生鮮食品だけでなくエネルギーを除く「コアコアCPI」も3.2%の上昇と1990年以来の高い上昇率となった。