小沢コージ
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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

トヨタ新型クラウン クロスオーバーGに加えてRSも登場…どっちが本当のクラウンなのか?

公開日: 更新日:

トヨタ クラウン CROSSOVER RS(車両価格:\6,050,000/税込み~)

 あのトヨタの豊田章男社長が「維新」と呼ぶほどの大変貌を遂げた新型16代目トヨタクラウン。ボディが4ドアセダンからクロスオーバーSUVになっただけじゃない。骨格も伝統のFRレイアウトからFFレイアウトの4駆に変わったと同時に、パワートレインも大刷新している。

 具体的には従来通りのTHSⅡと呼ばれるトヨタ流ハイブリッドに加え、新開発の「デュアルブーストハイブリッド」も追加されたのだ。グレード的には前者が「G」や「X」で後者が「RS」となる。

 そして9月の試乗会ではGにしか乗れなかったのが、先日行われた試乗会では遂にRSも登場。あまりに大きく走り味が変わったのでご報告したい。

 シクミ的には前者が2.5ℓエンジンを使うフロント2モーター式+リアモーターで究極の燃費重視型なのに対し、後者はフロント1モーター式+強力リアモーターでパワーとダイレクト感を重視。

 乗ったのはトップグレードのRSアドバンスドでシステム出力は349ps。234psのGと比べるとパワースペックは約1.5倍だ。

RSは発進から違いを感じられる

 違いを感じるのは発進から。力強さだけじゃない。THSⅡは最初はほぼモーターのみで走り、途中どこからともなくエンジンがモワーっと懸かり、その後もエンジン音と加速感は連動しない。まさにエンジンパワーとモーターパワーが混然一体となり、だからこそ効率もいいわけだが、その分パワーフィールはさほどでもない。この「間延び感」を欧米人はラバーバンドフィールと言って嫌う傾向もある。

 ところがデュアルブーストのRSはそれがないのだ。発進では確かに電動感もあるが直後に6速ATに繫がれた2.4ℓターボも回り始め、速度に連動してエンジン回転もシャープにアップ。ATもちゃんと2速、3速と順にシフトアップもする。

 なによりパワー感が絶大で、特にアクセル全開で飛ばした時の爽快さはTHSⅡの比じゃない。

“走りのクラウン”としてはRSの方が格上だが…

 また新型クラウン クロスオーバーは全車電動4駆でDRS(ダイナミックリアステアリング)なる4輪操舵技術も付く。RSの場合、その効果はGより絶大でリアモーター出力が高いため、ハイスピードコーナリングではリアがアウトに張り出しそうになるし、リア操舵も積極的。早い話、RSはGよりもリア駆動車的に曲がるのだ。

 よって確かに“走りのクラウン”としては、RSの方が格上とは言える。

 だが筆者は、決してクロスオーバーRSが新型クラウンの本命とは思わない。第一の理由は価格で、XとGが435万円スタートで高くても500万円台で買えるのに対し、RSはオール600万円台。確かにクラウンはリッチマンが買うクルマではあるが、ハリアーなどからのステップアップ客も見込めるわけで、Gの方が手軽だ。

Gの燃費性能はRSの約1.4倍

 また飛ばさない街乗りレベルでは2.5ℓハイブリッドのGでも十分速いし、ステアリングを切り込んだフィールはよりナチュラル。RSは少し硬めの可変制御サスペンションを備え、剛性感は高いがそこまで必要ない気もする。

 なにより燃費性能が段違いでWLTCモード燃費はRSが15.7km/ℓなのに対し、Gは22.4km/ℓ。Gの方が約1.4倍も優れている。

 走り好きの硬派客や輸入車からの乗り換えユーザーにとってはRSのが満足度は高いかもしれないが、町一番の新世代スタイルの国産高級車という意味ではGで十分だと思うのだ。なにより日本人はTHSⅡの感覚に慣れている。

 長い目で見た時の新型クラウンの本命はクロスオーバーGではないのか、と私は思うのである。

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