トヨタ新型クラウン クロスオーバーGに加えてRSも登場…どっちが本当のクラウンなのか?
トヨタ クラウン CROSSOVER RS(車両価格:\6,050,000/税込み~)
あのトヨタの豊田章男社長が「維新」と呼ぶほどの大変貌を遂げた新型16代目トヨタクラウン。ボディが4ドアセダンからクロスオーバーSUVになっただけじゃない。骨格も伝統のFRレイアウトからFFレイアウトの4駆に変わったと同時に、パワートレインも大刷新している。
具体的には従来通りのTHSⅡと呼ばれるトヨタ流ハイブリッドに加え、新開発の「デュアルブーストハイブリッド」も追加されたのだ。グレード的には前者が「G」や「X」で後者が「RS」となる。
そして9月の試乗会ではGにしか乗れなかったのが、先日行われた試乗会では遂にRSも登場。あまりに大きく走り味が変わったのでご報告したい。
シクミ的には前者が2.5ℓエンジンを使うフロント2モーター式+リアモーターで究極の燃費重視型なのに対し、後者はフロント1モーター式+強力リアモーターでパワーとダイレクト感を重視。
乗ったのはトップグレードのRSアドバンスドでシステム出力は349ps。234psのGと比べるとパワースペックは約1.5倍だ。
RSは発進から違いを感じられる
違いを感じるのは発進から。力強さだけじゃない。THSⅡは最初はほぼモーターのみで走り、途中どこからともなくエンジンがモワーっと懸かり、その後もエンジン音と加速感は連動しない。まさにエンジンパワーとモーターパワーが混然一体となり、だからこそ効率もいいわけだが、その分パワーフィールはさほどでもない。この「間延び感」を欧米人はラバーバンドフィールと言って嫌う傾向もある。
ところがデュアルブーストのRSはそれがないのだ。発進では確かに電動感もあるが直後に6速ATに繫がれた2.4ℓターボも回り始め、速度に連動してエンジン回転もシャープにアップ。ATもちゃんと2速、3速と順にシフトアップもする。
なによりパワー感が絶大で、特にアクセル全開で飛ばした時の爽快さはTHSⅡの比じゃない。
“走りのクラウン”としてはRSの方が格上だが…
また新型クラウン クロスオーバーは全車電動4駆でDRS(ダイナミックリアステアリング)なる4輪操舵技術も付く。RSの場合、その効果はGより絶大でリアモーター出力が高いため、ハイスピードコーナリングではリアがアウトに張り出しそうになるし、リア操舵も積極的。早い話、RSはGよりもリア駆動車的に曲がるのだ。
よって確かに“走りのクラウン”としては、RSの方が格上とは言える。
だが筆者は、決してクロスオーバーRSが新型クラウンの本命とは思わない。第一の理由は価格で、XとGが435万円スタートで高くても500万円台で買えるのに対し、RSはオール600万円台。確かにクラウンはリッチマンが買うクルマではあるが、ハリアーなどからのステップアップ客も見込めるわけで、Gの方が手軽だ。
Gの燃費性能はRSの約1.4倍
また飛ばさない街乗りレベルでは2.5ℓハイブリッドのGでも十分速いし、ステアリングを切り込んだフィールはよりナチュラル。RSは少し硬めの可変制御サスペンションを備え、剛性感は高いがそこまで必要ない気もする。
なにより燃費性能が段違いでWLTCモード燃費はRSが15.7km/ℓなのに対し、Gは22.4km/ℓ。Gの方が約1.4倍も優れている。
走り好きの硬派客や輸入車からの乗り換えユーザーにとってはRSのが満足度は高いかもしれないが、町一番の新世代スタイルの国産高級車という意味ではGで十分だと思うのだ。なにより日本人はTHSⅡの感覚に慣れている。
長い目で見た時の新型クラウンの本命はクロスオーバーGではないのか、と私は思うのである。