ベースアップとは「生活支援策」 決断した会社の心意気と英断、赤字でもベアの企業も
経団連の十倉会長が会員企業に対し、ベースアップを中心とする賃上げを働きかける姿勢を見せた。すでに「連合」が来年の春闘でベア3%、定期昇給2%の計5%程度の賃上げを要求する方針で、これに応えた格好。ベアは社員の勤務年数などに応じて給与を増やす「定期昇給」とは異なり、物価上昇で下がった実質賃金を回復する目的もある。定昇が社員のモチベーション維持のためなら、ベアは生活支援策の意味合いが強い。
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「急激な物価高騰へのインフレ対策として、役職員の“生活支援”のために平均5%のベースアップを行いました」
こう話すのは、総合不動産「いちご」のコーポレート本部担当者。同社はこの9月からグループ会社を含む約300人を対象に平均5%のベースアップを実施した。
「特に若い社員はインフレの影響を受けやすく、スーパーなどの買い物でもコスト増をより実感しています。そのため今回のベースアップは若い層ほど割合を高めています。仮に基本給30万円の8%増だとしても、月額にすれば2万4000円の賃金アップとなり、税金や社会保険料の増額分を差し引いても、目に見える形で『給与が増えた』と実感してもらえると思われます。当然ですが、社内のムードも好調です」(前出の担当者)
今回のベースアップは従業員の生活を守るためのイレギュラー的な策であって、これとは別に来年3月には本来の給与改定が行われるという。業績不振を景気のせいにする経営者は爪の垢でも煎じて飲んでもらいたい。