郵送検査キット「カラダものさし」考案者はニートから社長に 「売れる!」と確信した瞬間

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ヘルスケアシステムズ 瀧本陽介社長

「あのー、私の体内の塩分量やタンパク質の摂取量は正常でしょうか? 特に体に異常はないんですが、検査してもらえませんか」──こんな理由で、病院へ行く人はまずいないだろう。だが、すごく気になる!!

 こういった健康意識が高い現代人にいまウケている簡易検査キットがある。送られてくるキットに、自宅で唾液や便尿、あるいは精液などを入れて送り返すだけ。気になる体内のさまざまな数値を、およそ1週間後には測定してくれる郵送検査キット「カラダのものさし」だ。

 コレを開発・販売しているのが今回登場の瀧本さんとヘルスケアシステムズ。

 人生100年時代といわれ、予防医療に世間の関心が高まっていることを追い風に、同社が販売する検査キットは約20種類。体のサビ(酸化)チェックやピロリ菌チェック、腸内フローラ検査などもあり、1つの検査キットは約4000円と安くはないが、2009年の創業以来、利用者は延べ52万人を超え、売り上げは9年連続黒字を計上、前年比30%アップと好調だ。

「人の生死に直接関わるものではありませんが、生活習慣や体質は、健康に関わる大切な要素。ですが皆さん、『何となく塩分取りすぎかも』とか『体に良さそうだから食べてみよう』といって、根拠や行動を勘や感覚で判断、実行してしまっています。そうした“生活習慣のミスマッチ”をゼロにすることが、私たちの使命なのです」

 ちなみに、タンパク質量の測定は、社会問題となっている高齢者の老化予防に、また精液の成分濃度の検査は妊活に大いに役立つそうだ。

■社長予定者が突然の辞任…代わりに社長の大役を

 こんな便利なものを生み出した瀧本さん。しかし、やっぱり“生みの苦しみ”があった。

 三重県に生まれ、金沢大学理学部生物学科で昆虫の生態について学んだ。大学院を中退し、某大手旅行代理店に就職するものの、昆虫の研究ばかりしていて世間に疎かったせいか、わずか2年で退職。その後しばらく、三重の実家でいわゆる“ニート”となる。

「さすがにこのままではマズい。何か仕事をしないと」と思ったある日、三重大学発のベンチャー企業のパート募集のチラシを新聞の折り込みで見つける。

「研究に関してなら、少しは役に立てるかも」と、27歳の時に応募。その会社は食品メーカーの委託で特定の食品の機能を調べるのを主な業務としていた。瀧本さんは当初、研究補助として入ったが、「人手が足りなかったこともあり、食品の臨床試験の計画から営業、試験の運営、経理まで幅広く経験させてもらえました。それが今につながっていると思います」

 にわかに仕事が楽しくなった瀧本さん。もっと大きな会社で自分の力を試そうと退職を決意。仕事で世話になっていた名古屋大学名誉教授の大澤俊彦氏に挨拶に出向いた。それが運命の分かれ目となる。

「名古屋大学発のベンチャーをつくるから一緒にやらないかと。それが今の会社、ヘルスケアシステムズです」

 当初は一社員として参画する予定だったが、社長予定者が突然の辞任。代わりに社長の大役を任じられたのだった。

 それから4年もの間、想像以上の苦難の連続で、「ずっと逃げたかった」と振り返る。

「会社の核としたのが、大澤先生が開発した『抗体チップ』という検査技術。これはガラス基板の上にさまざまな試薬をのせ、微量な検体から一度に多くの項目を安価に測れるという画期的な技術です。しかし創業当時はまだ開発途中で、お客さまに出せる商品になるまでには課題がたくさんありました。一言でいえば全くお金にならなかったんです。しかし研究開発にはお金がかかる。日々減っていく銀行口座の残高を見ながら、一体どうすればいいんだと、まさに地獄にいるような気分でした」

 だが、ここから逆転劇が始まる──。

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