株価暴落に右往左往しない ユニークで心強い「相場ジンクス」を専門家が解説
株式市場の暴落に個人投資家は右往左往している。日経平均は乱高下を繰り返し、先週は6月高値から2500円近く下落。急落に耐え切れず“ろうばい売り”する株主も増えてきた。でも、ちょっと待った! 株価は下がり続けるわけじゃない。この先、市場はどうなるか。専門家の見立ては?
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悪材料はてんこ盛りだ。米金利上昇で日米の金利差は拡大。円安が進行し、輸入物価は急上昇する。仕入れ価格アップに企業は直面し、業績は悪化するばかり。株価もダダ下がりだ。
「米FRB(連邦準備制度理事会)の量的引き締め(QT)が始まり、市場にあふれていた緩和マネーが回収されます。株式市場にとってはマイナス材料です。そこに米金利上昇やウクライナ紛争が加わり、世界的な株安を引き起こしています。ただし、国内は参院選がスタート。日経平均は先週末(17日)2万6000円を割り込みました。2万5000円の攻防となるかもしれませんが、そこが底でしょう。参院選後を見据え、株価は上昇に転じると睨んでいます」(株式評論家の倉多慎之助氏)
参院選で与党が勝てば73%の確率で株価アップ
大和証券のリポート「参院選に向けた株価動向」は面白い。1990年以降の国政選挙とTOPIX(東証株価指数)騰落率を分析している。
与党が勝利したケースは過去11回。そのうち、5営業日後にTOPIXがプラスだったのは8回、勝率は73%だ。
今回の参院選投票日は7月10日。5営業日後は、15日となる。与党が勝てば株価上昇の材料だが……。
「そのあたりから株価は反転すると思います。外国人投資家は6月の第2週まで3週連続で買い越しています。海外勢からすれば円安により日本株は割安になっていますから、選挙で与党が勝てば政治の安定を意識し、一段と買ってくる可能性は高い。2万8000円を固められれば、2万9000円も見えてくるでしょう」(倉多慎之助氏)
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の後押しで年末2万9000円
心強いジンクスもある。NHK大河ドラマと株価(日経平均)の関係だ。
不思議なアノマリー(合理的には説明のつかない株価の経験則)ながら、源平合戦の時代を描く大河ドラマの放映年は株価が上昇する。
放送される前年と放映年の年末株価を比較すると「新・平家物語」(1972年)は91.9%アップ、「義経」(2005年)は40.2%アップ、「平清盛」(2012年)は22.9%アップだ。
「平清盛や源頼朝が武家による新しい時代をつくっていきます。時代を切り開くわけです。視聴者に勇気を与える内容ともいえます。大河ドラマは1年間にわたり放送されますから、プラス効果は大きい。『鎌倉殿の13人』も人気は上々ですし、ジンクス通りの株高を願っています。昨年末の日経平均は2万8791円。今年の年末は2万9000円台を期待したいですね」(三井住友DSアセットマネジメント理事チーフエコノミストの宅森昭吉氏)
サッカー日本代表がもたらす株高
宅森氏は、もう一つ、ユニークで頼りになるジンクスを教えてくれた。
サッカー日本代表と株価の関係だ。今年11~12月はW杯カタール大会が開催される。日本中が沸くスポーツイベントだが、株価を動かすほどの影響力があるのか。
「日本が初のW杯出場を決めた1997年11月16日(試合終了は17日未明)の“ジョホールバルの歓喜”。その翌日は北海道拓殖銀行の経営破綻が報じられました。株式市場は金融危機を意識し、暴落してもおかしくなかったのに1200円上昇したのです。サッカー日本代表がもたらした歓喜が市場を動かしたといえます」
宅森氏によると、日本代表が2点差以上をつけて勝ち、地上波で放送され視聴率が2ケタだった場合、翌日の日経平均は上昇するという。
直近では、W杯アジア最終予選の中国戦やサウジアラビア戦などが当てはまる。日経平均はジンクス通り、上昇だった。
「カタール大会は11月23日にドイツと初戦です。27日にコスタリカ、12月1日にスペインと続きます(いずれも現地時間)。強豪国ぞろいですが、株式市場のためにもぜひ勝って欲しい」(宅森氏)
2点差以上の勝利で、年末の2万9000円台が見えてくる。
悪材料ばかりに反応している株式市場だが、好ジンクスを知って、じっくり構えていればそう慌てることはない。年末の株高に向け、今が絶好の仕込み時と割り切ってみては? ちょっとした小遣いを稼げるかもしれない。