ロシアで“ポスト・プーチン”の跡目争いが始まった 穀物利権めぐり側近たちで内紛勃発
プーチン大統領は17日、ロシア版ダボス会議と呼ばれるサンクトぺテルブルク経済フォーラムで演説。重病説がくすぶる中、表舞台で「欧米の制裁は成功していない」と気炎を上げたが、側近たちは「跡目争い」に血眼だ。
現在、プーチン大統領の後釜として有力視されているのはモスクワのソビャニン市長、メドベージェフ前首相、キリエンコ第1副長官の3人。中でも、ウクライナ侵攻開始後に東部ドンバス地方の統括責任者に就任したキリエンコ氏が頭角を現している。
英紙タイムズ(16日付)によると、プーチン大統領の側近はウクライナから収奪した穀物の輸出利権をめぐって対立。その1人であるキリエンコ氏は今月6~8日、ドンバス地方のベルジャンスク港などを訪れ、ドネツク、ルガンスク両共和国の要職を自らの側近にすげ替えたという。
■最有力候補が基礎固め
「ロシアにとって穀物輸出が最優先事項であることから、側近たちは港湾物流に関心を高めています。自分のために動くオリガルヒを通じた権益確保がロシア政治の常套手段。キリエンコ氏に関しては、ロシアの有力紙イズベスチヤが『ロシアの日』(今月12日)に、彼の所感をウェブ上に掲載しました。すぐに消されましたが、その内容は『たとえ一時的に国民の生活水準が下がったとしても、ドンバスを再建する』というもの。“プーチンの戦争後”が見えない中、戦後復興の枠組みを示したような格好です。大統領であるかのような所感は、自分こそがプーチン氏の後継者とアピールしているに等しい。普通ならあり得ませんが、ペスコフ報道官は『見ていない』として事実上、黙認しています。キリエンコ氏が『ポスト・プーチン』の最有力候補になりつつあるのでしょう」(筑波大名誉教授の中村逸郎氏=ロシア政治)