ロシア軍は戦力“ジリ貧”で停戦渇望か 交渉団代表「対話を続ける用意」発言の意味深
ロシア軍がウクライナに軍事侵攻を開始してから24日で3カ月。欧米からの武器供与で“戦力充実”のウクライナ軍とは対照的に、ロシア軍の戦力はジリ貧だ。今後、劣勢に立たされる見方もあり、プーチン大統領が「停戦」を渇望している可能性が出てきた。
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ウクライナとの停戦交渉でロシア側の代表を務めるメジンスキー大統領補佐官が意味深な発言をした。22日のベラルーシのテレビ番組で「われわれには対話を続ける用意がある」と主張。双方が基本的に同意した和平交渉の草案をウクライナ側に1カ月前に提示したのに、具体的なレスポンスがないという。「ボールは完全にウクライナ側にある」とし、「プーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談をロシア側は拒否していない」と強調した。
表向きはウクライナ批判だが、中身は停戦交渉の呼び掛けである。軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう言う。
「停戦交渉を頓挫させているのはロシアではなく、ウクライナだとアピールしているのは、政権内で停戦交渉を求める意見が出てきているのだと思います。それだけでなく、プーチン大統領が本気で停戦を望んでいる可能性もあります」
欧米がウクライナに追加供与する武器は6月中旬以降に揃う見通しだ。一方、ロシア軍はウクライナに投入した地上戦力の3分の1を失ったとの分析もある。戦力損耗率が30%を超えると軍隊として機能しなくなるとされ、ロシア軍は兵士や武器をかき集めようと必死になっているが、限界がある。
戦況が不利になる前に…
ロイターの報道によると、英国王立防衛安全保障研究所のニール・メルビン氏は「時間の経過とともにロシア軍が不利になるのは間違いない。彼らは装備、とりわけ新型ミサイルが枯渇している。そして当然ながら、ウクライナ軍はほぼ毎日強くなっている」と指摘している。
「ロシア軍はマリウポリを制圧しましたが、他の地域では一進一退の攻防が続いています。今後は欧米の武器供与の効果が出てくるので、ウクライナ軍が反転攻勢に出る可能性が高い。劣勢になったロシア軍が停戦交渉をしても、ウクライナから譲歩は得られません。戦況が不利になる前にロシアが停戦交渉を急いでもおかしくありません」(世良光弘氏)
23日のロイターは、ロシアのルデンコ外務次官が「ウクライナが建設的な立場を示せば、直ちに交渉に復帰する用意がある」と語ったとのロシア通信の報道を伝えた。プーチン大統領は停戦に向けて動くのか。