「ファミリーオフィス」とは何か? いずれ市場を揺さぶる存在に
世界にはケタ外れの金持ちが数多く存在する。彼らの悩みは、せっかく築いた巨万の富を溶かすことなく、代々継承していくことだが、そこで生まれたのが「ファミリーオフィス」である。
欧米では古くから存在し、起源は6世紀ごろのヨーロッパの王侯貴族のための資産管理とされる。19世紀に米国のロックフェラー家などの大資産家が一族の永続的な繁栄を目的としてファミリーオフィスを設立したことで、欧米の超富裕層の間で一気に広まった。さらに1980年代以降のハイテクブームで大成功した起業家が次々とこれに続き、現在、その数は欧米中心に1万社以上といわれる。で、ファミリーオフィスの総運用規模だが、全世界で1兆ドル(約130兆円)とも6兆ドル(約780兆円)とも試算されている。
これほどまでに巨大化したファミリーオフィスだから、たまには事件が起きる。それが2021年春の「アルケゴスショック」だ。投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントは、多額の借り入れによる株式投資の失敗により経営破綻、日本の野村HDを含む世界中の金融機関に合計1兆円もの損失を与えた。その投資会社は、大手ヘッジファンドに勤務経験のあるビル・ホワン氏が設立し、運用資産が100億ドル(当時約1兆1000億円)超のファミリーオフィスだった。