ヒトラー政権さえやらなかったロシア軍の“蛮行”…世界最大級「種子バンク」破壊の深刻度

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〈蛮行だ〉〈何という悲劇〉──。ロシア軍がウクライナの種子貯蔵庫を破壊し、ネット上で批判が噴出している。

 ロシアの反政府系調査報道サイト「ザ・インサイダー」(17日付)によると、ウクライナ北東部ハルキウにある「シードバンク」(種子銀行)がロシア軍の爆撃によって破壊されたという。「シードバンク」は、植物などの種子の遺伝資源を収集・保管する施設。攻撃されたシードバンクは世界最大規模のひとつで、16万種以上のタネを保管していた。

 この「蛮行」を告発したウクライナ国立科学アカデミーの主任研究員(農学博士)は「現代では復元できない数百年前のタネも含め、何万ものサンプルが灰になった」と発言。「悲しいかな、ヒトラー政権下のドイツでさえ、ウクライナを占領している時に、このコレクションを破壊しようとはしなかった。むしろ保存に努めたぐらいだ」などと主張した。

 ロシア軍が意図的にシードバンクを狙ったのか、たまたま爆撃してしまったのかは定かではないが、悪質であることに変わりはない。

人類の共通財産が壊されたと言っても過言ではない

 東大大学院教授の鈴木宣弘氏(農業経済学)がこう言う。

「人類は何千年もかけて品種改良を繰り返し、良いタネを残してきました。多種多様なタネを保存することによって、作物の単一化による不作や飢饉を防いできたのです。状況に応じて使えるタネを保存しておくことは、人類の繁栄に欠かせません。保管してあるタネの全てが失われていないとしても、長い歴史をかけて集積した『人類の共通財産』が壊されたと言っても過言ではありません。人類にとって大きな損失です」

 そもそも、ウクライナでは軍事侵攻によって種子生産が半減する可能性が浮上している。作付け用種子の不作は、世界的な食糧不足に拍車をかける恐れすらある。

「日本も関係のない話ではありません。日本はタネの国産比率が10%。日本で開発したタネであっても、90%を海外で生産して輸入している状況です。そもそも不作だったり、戦争などで物流が止まったりしたら、日本に入ってこない。食の安全保障を脇に置いた日本政府の外交姿勢に疑問を禁じ得ません」(鈴木宣弘氏)

「プーチンの戦争」が食糧危機を加速させてしまうのか。

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