他社もやっている取引でSMBC日興証券だけが狙われたのはなぜ?
世間を騒がせていたSMBC日興証券(日興)の相場操縦事件の捜査が終結した。元副社長や元エクイティ部長ら元幹部6人と法人としての日興が金融商品取引法違反(相場操縦)の罪で起訴された。問題となったのは、2019年12月から21年4月に日興が手がけた「ブロックオファー」取引。対象10社の株価を買い支える目的で違法に株価を「安定操作」したというものだ。
なじみがないだろうが、「ブロックオファー」とは、大株主の保有株を市場外で投資家に転売すること。大株主は需給バランスを崩さずに大量の株式を売却でき、投資家は割安に株式を買えるメリットがある。そして証券会社は買い取りと売却の価格差が利益になるわけだ。
報道ではあまり強調されなかったが、「ブロックオファー」自体は違法でなく、他の証券会社も扱っている取引である。では、いったい日興のどのような手法が相場操縦とみなされたのか。
ここ数年、持ち合い株の解消もあり需要が高まっているブロックオファー取引。まず株を売りたい大株主が複数の証券会社に声をかけ、「コンペ」をするのが通例だ。各社は割引率などの条件を提示して競うが、日興の強さが際立っていたという。日興はブロックオファーの案件を多数獲得し確実に利益を計上していた。そこには不適切な株の買い支えという「カラクリ」があったようだ。